バックグラウンドチェックで終わりではない

欧米では、バックグラウンドチェックをクリアし、現場配置についた後も、ボランティアスタッフ同士によるチェック機能が常に働いています。IDを下げていないスタッフには他のスタッフが「IDを見せて」と要求し、IDでアクセスできるエリア外で活動していれば「ここはあなたの活動エリアではないけれど、なぜここにいるのか?」と訊ねます。

私は、イベントのボランティアスタッフに対しセキュリティ研修を行う時、こうした海外の事例をお話しています。その後の質疑応答で「スタッフ同士で監視し合うなんて…」という意見が必ず出ます。「仲間を信用していないと思われる」「同じスタッフなのに注意するとか、言いづらいし…」との気持ちが勝り、相手の不自然な部分に対して指摘できないことが多いのです。海外におけるボランティアスタッフ同士のチェック機能は、相手を信用するために当然行うべき確認方法であり、「おかしいな」と感じたことは納得するまで尋ねることこそ、自身の担当エリアを安全に保つために欠かせないボランティアスタッフとしての活動要件のひとつなのです

一方で、バックグラウンドチェックはスタッフ採用時に重要なセキュリティ項目なのですが、これでセキュリティ対策が完璧になるわけではありません。プラスのセキュリティ対策を実行していくことでリスクを低く抑えていくことができます。

ところで、東京2020大会のボランティアスタッフに対し、バックグラウンドチェックはどの程度行われるのでしょうか? もしも、全くできない(やらない)のであれば、その代替となるセキュリティ対策を考えなければなりません。当然、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は何かしらの対策を講じていると思います。まさか、ボランティアスタッフに対するセキュリティ対策を荷物検査と顔認証システムだけに頼るわけではないですよね?

(了)