2016/10/16
誌面情報 vol57
災害時に解体現場で露呈
2002年に発表された早稲田大学の村山先生の予測によると死亡者のピークは2030年頃で1年間に約4000人が中皮腫で亡くなるとしています。この頃亡くなる人がアスベストの曝露を開始したのは1990年頃。今のように防塵マスクや湿潤化の対策を考える以前のことです。40年後のためにお金をかけて対策をしましょうというのは、一企業、一個人の力でできるかというとなかなか難しいでしょう。やはり国がきちんと規制をしなければいけないと思います。
アスベストリスクの特徴
アスベストリスクはどこにでも大量に残っています。目に見えず臭いもなく気づかずにアスベストを吸い込んでいます。これ以下だったら安全という値がないので、少し吸ってしまうとそれだけ発がんのリスクが上がり致命的な病気にもつながる。潜伏期間が極めて長いのも特徴で誰でも病気になる可能性があります。クボタショックのように、周りに住んでいる人も病気になってしまう。やはりこれは他の物質とは違いますので、強力な規制が必要です。これから問題になってくる解体作業を実施するのは中小事業者ですから、支援も必要だと思います。
アスベストが含有されているもの
アスベスト含有建材はどこにあるのでしょうか。レベル1に分類されている吹き付け材は最も危険です。1975年に禁止されていますので、もうすでに40年くらい経っていて劣化しています。この建物で働いていた人は中皮腫になっています。吹き付け材として小学校や鉄筋コンクリートで作られた自治体の集合住宅によく使われていました。クリソタイルよりも発がん性の強いレベル2のアモサイトとい
う茶石綿が使われているのが煙突です。飛散性が非常に高いです。レベルには、ほかにも配管がL型に曲がっているところを補強するテープや屋根用の断熱材などに入っています。ほかにも耐火被覆板、あるいはケイ酸カルシウム板に含まれています。レベル1が吹き付け材、レベル2が石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材、石綿含有断熱材の4種類。レベル3はそれ以外のすべてです。「木造なのにどうしてアスベストがあるんですか」と聞かれたことがありますが、木造住宅でも外壁や屋根などにアスベストが入っている建材が使われているからです。
最近問題になっているのが外壁の塗材です。劣化してはがれます。また、建物も施工されてから何十年も経っていることが多いので、アスベストがどこに使われているのか簡単にはわからない。それにすぐに除去や解体ができず、ある程度の期間を維持管理しなければいけない建物がたくさんあります。除去解体の時アスベストの飛散などで曝露リスクは非常に高まりますが、対策は不十分です。解体現場で分別できていないので再生砕石にすらアスベストが入っています。
2010年には高校で吹き付けたクロシドライトの飛散事故がありました。これは事前の調査不足でアスベストを飛散させてしまった。それで2014年に国土交通省が調査のための資格、建築物石綿含有建材調査者という新しい制度を作りました。現在は約600人の調査者がいます。私も実はこの第1期生です。ですからこれからようやくしっかりとした調査が進むという段階です。
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