最悪の場合人減らしも

飢饉は長期にわたることが一つの特徴であり、「飢饉は2年続く」との言い伝えもある。農民の栄養状態が悪化し、疫病が流行して飢えのために種もみさえ食いつぶすばかりか、翌年は労働力の投下が著しく不足して作柄が悪くなるからである。

飢饉は重大な社会問題であるから、当然、為政者による荒政という対策がとられる。「荒」とは漢籍(漢語)で飢饉を一字に略するときに用いる。飢饉の年を荒歳、飢饉に備える政治を荒政といい、作物が実らず飢饉になったことを凶荒と言った。したがって、飢饉の困苦を助け救う植物を救荒植物もしくは救荒本草と言ったのである。

飢饉によって、もう一つ社会的に重大かつ深刻な影響を受けるのは人口の減少で、餓死者の他、出生率の低下がある。青年男女と共に飢饉の年には栄養も悪く元気がないから、その間に生まれる新生児も少なくなる。加うるに社会不安が重なって赤子を生むのを控えるようになる。世に知られた飢饉の後の誕生児数は極端に少なくなって、これに人口の低落に拍車をかける。同時に飢饉の年の後には、堕胎とか間引き(いずれも子殺し)という悪習がまん延した。人倫に反したこうした風習も一つには飢饉と言う不可避な厄災が持たらした結果であって、豊かな食糧の存在が人道上もいかに不可欠かを知ることができる。