2019/10/15
安心、それが最大の敵だ
江戸時代以降は冷害が脅威
近世(江戸初期以降)になると、農業土木技術が進んで、用排水堀や灌漑施設が多く開発され、平坦な土地には広々とした田地が広がり、また湖沼や海岸湿地などを干拓して新田開発を進めた結果、旱害は余り深刻な影響をもたらすものではなくなった。だが稲の実る北限まで田を耕して、米作をすることになったので、例年より気象が冷涼すぎると、米の収穫はがた落ちとなる。近世以降は東北地方が米作の中心地(穀倉地帯)のひとつとなるが、冷害がこの地方では繰り返し起こり農民を苦しめた。
冷害による不作・凶作、それのもたらす飢饉は防ぎようがなく、江戸中期以降の宝暦・天明・天保の大飢饉はこれらが要因となって起こった。昭和時代に入っても、6年(1931)・9年(1934)・16年(1941)などの冷害が農民らを飢餓に追い込んだ。
西日本に比べて、遅れて米どころとなった関東や東北地方では、冷害が深刻な問題となって農民に苦労を強いたのである。たとえば常陸国(現茨城県)では、夏になっても長雨が降って涼しい年には、米の結実が十分ではなく、反対に日照りが続いて暑い年には、穀物がよく稔って豊作となる(「日照りに不作なし」と言われた)。逆に雨が多くて涼しい夏は不作の年と決まっていた。
たとえば、昭和51年(1976)の夏は冷夏で、特に岩手県などの米作は相当な不作となったが、逆に53年(1978)の夏は雨が極端に少なくて記録的な暑さが続き、秋の米作も記録的な豊作となった。近年日本での米の余剰が著しく増大したため、政府はかえって四苦八苦という境地に追い込まれた。
- keyword
- 安心、それが最大の敵だ
- 凶作
- 飢饉
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方