2016/10/04
講演録
TIEMS(国際危機管理学会)日本支部
TIEMS(国際危機管理学会)日本支部は2016年7月27日、「熊本地震の検証~「危機管理の予測・予防・対応」という観点から振り返る~」と題したパブリックカンファレンスを都内で開催した。
講演を行ったのは、国立研究開発法人防災科学技術研究所理事長の林春男氏、東京大学地震研究所教授地震予知研究センター長の平田直氏、静岡大学情報学部講師の井ノ口宗成氏、そして名古屋工業大学大学院教授の渡辺研司氏。
林氏は「熊本地震の検証~危機管理の予測・予防・対応~」と題し、災害に強いレジリエンスな社会とは何か、回復力を向上させるための予測力、予防力、対応力について熊本地震を取り上げながら解説した。平田氏は「熊本地震は予測できたのか、今後の巨大地震にどう備える」と題し、地震予知研究の観点から今回の熊本地震について国はどのような予測を立てていたのか、今後の巨大災害にどう備えればいいのかについて話した。井ノ口氏は「熊本地震における生活再建」と題し、「被災者生活再建システム」を活用した「市町村で統一の基準に基づいた生活再建」について説明した。渡辺氏は、「熊本地震に伴う産業被害の状況把握と復旧活動の検証」として、現地取材による熊本地震に伴う企業や産業被害の概要や地域型のBCMについての重要性と課題について報告した。
続いて、林氏、平田氏、井ノ口氏、渡辺氏によるパネルディスカッションを行った。コーディネーターは京都大学防災研究所教授の牧紀男氏。
会場から出た熊本地震のリスク評価について、平田氏は「人が30年以内に交通事故に遭う確率は24%、火災に遭う確率は1.4%と言われており、それでも皆さん保険をかけている。『30年以内に地震の来る確率は0.9%』というのは、捉え方にもよるが非常に高い数字と考えてほしい」とした。
それに対し、林氏は「例えば人間は、100%の確率で1000円もらえる、50%の確率で2000円もらえると言われれば、皆さん1000円もらえる方をとる。ただし、逆に100%の確率で1000円を失い、50%の確率で2000円失うと言われたら、50%をとる人が多い。自分が得する時には慎重に、リスクにはチャレンジングになる傾向になる」と話した。
渡辺氏は、「RESAS(政府が各自治体に提供している地域経済分析システム)のデータをもっと企業に開放して、普段使いに活用すべきでは?」との質問に対し、「政府がRESASを民間に開放するのは、RESASのデータを提供している民間企業などのとの兼ね合いで難しいだろうが、例えば企業が『その地域の雇用を生むために必要』というスタンスであれば、ある程度のデータ共有はできるのではないか。宮城県など、企業立地に活用している例もある。普段から活用することで、災害時の産業支援にも役に立てられる」とした。
井ノ口氏は会場から出た「今回の熊本地震で自治体がコールセンターを作ったそうだが、FAQなどを作ってもいいのでは?」との質問に対し、「今回は自治体がどのような質問に対してどのような回答をしたか、全てデータベースとして残っている。次の災害に備えて、場合によってはガイドライン化やマニュアル化を進めていくべき」と回答した。
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/15
-
-
-
-
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
-
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
-
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方