2019/11/01
危機管理の神髄
緊急事態管理の機関は緊急事態を管理していない
当初トランプ政権はプエルトリコの災害対応においてはすべて適切なことをしているように思われた。9月20日の水曜日、ハリケーン・マリアが上陸したときの活動は狂乱状態であった。大統領は島の自治体の役人に電話をして緊急事態宣言を発し、すべての連邦の資源を援助に振り向けると約束した。しかしその後の4日間、嵐で荒らされたプエルトリコが電力の供給が停止された暗闇の中で食料と水を求めて苦戦しているときトランプとその側近たちは沈黙した。大統領はプライベートゴルフクラブでの長い週末を過ごすためにエアフォースワンに搭乗した。トランプもホワイトハウスの上級補佐官の中の誰も高まりつつあるクライシスのことは口にしなかった。
2005年の8月にも同様のことがあった。ハリケーン・カトリーナのクライシスに無頓着なブッシュ大統領はテキサス州クロフォードにある1600エーカーもある自分のプレイリーチャペル牧場で来る日も来る日も過ごしていたのだ。大統領に負担をかけたくなかったスタッフはニューオリンズの状況について詳しい報告をしなかった。クライシスが大きくなると補佐官たちはありのままを大統領に知らせなければならないと決断した。補佐官の一人はハリケーンで荒廃した共同体の状況をビデオにまとめて大統領に見せた。この時点でブッシュ大統領は休暇を切り上げて戻ることを決めた。大統領は牧場での29日間を後にして8月31日にワシントンへ帰任した。
いずれの場合にも連邦政府は”全ての災害はローカルである“というやり方が始まるのを待って、傍観していたのである。
緊急事態管理機関の使命はクライシスがもたらす災害のサージ(大波)を発見し対処するために十分に大きく、十分に速いことである。FEMAは、それは誰か他の人の仕事だと思う。緊急事態管理のマネジャーはクライシスの初期の段階で高齢者、特別のニーズがある人、子供、家族への影響を発見し、対処する。FEMAが同様のことをする能力を開発しないまま今日に至っているのはその理由によるものである。こうした点においてFEMAはユニークであり、米国のどの緊急事態管理機関ともまったく異なるものである。
こうしてわれわれは、1992年のホームステッド、2005年のニューオリンズ、2017年のプエルトリコがまさにそうであったように、次なるマリア級の災害、もう一つのタクロバンのシナリオがこの国で繰り広げられるのを見るよう運命づけられているのだ。
そのとき結果のかわりにわれわれが見るのは責任のなすり合いだけである。ハリケーン・カトリーナのクライシスの最中、国民とメディアはブッシュ大統領とFEMAのマイケル・ブラウン長官の責任にした。ブラウン長官はルイジアナ州知事のキャスリーン・ブランコを、ブランコ知事はレイ・ネイガン市長とニューオリンズEOCのカール・メテイリーを名指した。それがどのようにうまく働いたか、今なら彼らに聞いてみよう。
(続く)
翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方