2019/11/01
気象予報の観点から見た防災のポイント
発達した積乱雲

図1は、記者会見での説明に用いた気象レーダー画像である。赤で表示された、最強レベル(降水強度80ミリ/h以上)のメッシュを含む、団塊状のエコーは発達した積乱雲である。それが、13時20分から13時30分の間に、佐呂間町を南南西から北北東へ通過したことが分かる。
発達した積乱雲は、竜巻やダウンバーストなどの激しい突風を伴うことがある。竜巻とダウンバーストでは風の吹き方が異なる。竜巻は激しい渦巻きで、漏斗状の雲ができるのに対し、ダウンバーストは上空から噴射された空気が、地表に当たって放射状に広がるものである。
現地の佐呂間町では建物が倒壊したとのことなので、発達した積乱雲の通過に伴って激しい突風が発生したとみられる。その突風が、竜巻・ダウンバーストのいずれであるのかについては、地元の気象台が現地に出かけて行き、突風の痕跡を詳細に調べることにより断定される。ただし、今回は現象の発生が昼間であったことから、地元の住民等により撮影された動画や、目撃証言などがあれば、それによって現象が特定される可能性はある。筆者は会見で、そのような説明をした。
会見後、やはり現地で撮影された動画がメディアで報道されるに至り、今回の突風が竜巻によるものであることが明らかになった。翌日、網走地方気象台が実施した現地調査によっても、その結論が裏付けられた。
竜巻に関する一般知識
記者会見では、竜巻などの突風の発生時期、場所および気象条件に関する質問を多く受けた。ここで、過去にわが国で発生した竜巻に関する統計データを確認しよう。

図2は、過去27年間における竜巻の月別発生確認数である。これを見ると、竜巻は秋に多く、春に少ない。最多月の9月を中心に、夏から秋にかけては台風に伴う竜巻が多い。また、10月から12月にかけては気温が海水温に先行して下がっていく時期で、まだ温かい海水の上に寒気が流れ込んで大気の状態が不安定になるため、寒冷前線などに伴って積乱雲が発達しやすい。
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