特定非常災害の指定は手続延長など大きな意味があります

特に大規模な災害があると、本来行うべき各種手続をとることができず、本来の期限が過ぎてしまうことがあります。たとえば、運転免許証の有効期限を過ぎてしまったり、営業許可申請の記載の変更事由の届出義務を履行できなかったりということが起きます。そのような場合に免許失効などの不利益を受けないようにする法律が「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」(特定非常災害特別措置法)です。

法律が適用されるのは、政府が「著しく異常かつ激甚な非常災害であって、当該非常災害の被害者の行政上の権利利益の保全等を図るために措置を講ずることが特に必要と認められるもの」と判断し、政令を定める閣議決定をした場合に限られます。

この法律又はその前身となる特例措置が使われた実績は、阪神・淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、西日本豪雨(2018年)、令和元年台風第19号被害(2019年)があります。広範囲にわたって大きな被害が発生した災害に限られているのです。

なぜこのような法律があるのでしょうか。

大災害の都度、期限などを定めた膨大な行政法規をひとつひとつ臨時で改正する余裕はありません。そこで、内閣府が特定非常災害特別措置法を発動(政令指定の閣議決定をします)することで、そのあとは、各省庁が対象となる手続きを列挙すれば足りるようにしているのです。特定非常災害特別措置法の発動を決める政令と同時に、その区域や措置をとる期間などを決める政令も発令されます。

特例措置には、次のものがあります。この中から必要な措置が選択されて政令指定されます。

(1) 運転免許のような許認可等の存続期間(有効期間)の延長
(2) 事業報告書の提出などの法令上の義務を履行できない場合の免責期限の設定(本来の期限が延長されますのでその間は処分や刑罰を受けません)
(3) 債権者側からの債務超過を理由とする法人に係る破産手続開始の決定留保
(4) 相続放棄等の熟慮期間(相続開始を知ってから3カ月)が延長(最大1年)【
第26回「相続放棄ができる期限に注意を」参照】
(5) 民事調停の申立手数料の免除
(6) 応急仮設住宅の存続期間(建築基準法により原則2年以内)のさらに1年の延長、仮設建築物の存続期間(景観法により原則2年以内)のさらに1年の延長

行政手続上の期限延長や免責(主に(1)と(2))は、各省庁で膨大な数の手続きが該当し、総務省のホームページにまとめて順次掲載される扱いです(令和元年第19号台風被害については「令和元年台風第19号による災害「特定非常災害」指定について(各種の許認可等(運転免許等)の有効期間の延長などが行われます)」を参照してください)。

また、(4)相続放棄の熟慮期間の延長など、家族の財産状況に大きく影響する手続きも法務省のホームページで解説がなされます(令和元年台風大19号被害については「令和元年台風第19号の被災者である相続人の方々へ~政令により延長された相続放棄等の熟慮期間は、令和2年5月29日までです~」を参照してください)。

ぜひお知らせをチェックするようにしてください。

(了)