ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
アメリカ社会を変えた一人の女性消防士
社会に根強く残る「くすぶり続ける火」とは?
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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今朝、私が受信している消防・防災系の配信メールで、下記のニュースを知りました。
■消防庁が女性の採用を強化 注目集まる「消防女子」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161218-00000044-economic-bus_all
(出典:Yahoo!ニュース)
この記事を読んでニューヨークに住んでいた約22年前、1982年にニューヨーク市消防局ではじめて採用された女性消防士のBrenda Berkman(ブレンダ・バークマン)さんに当時の勤務事情について話を伺ったことを思い出しました。
ブレンダさんのかっこいい生き様については「Taking the Heat」映画になっており、YouTubeで見つけましたので、今回ご紹介したいと思います。
※映画タイトルのTaking the Heatの意味は直訳すると「熱を奪う」、英語の意味は「非難を浴びる」ですが、この映画は一人の女性消防士の物語が体験した差別という「くすぶり続ける火」を連想させます。
「Taking the Heat- Part 1- The first women firefighters of New York City」(出典:YouTube) (パート3まで見ることができます)
私が今回、書きたいこと、みなさんに感じていただきたいことは、消防職務上の男女差別や女性に対する性的な嫌がらせの問題だけではなく、一人の消防士だったブレンダがニューヨーク市消防局のさまざまな問題を改善するきっかけとなり、また、アメリカ社会における労働上の男女問題の意識を大きく変えたという「たった1人の人間がアメリカにおける消防職の労働事情を変え、今も改善結果が継続している」ということです。
上記の映画はパート3までありますが、ブレンダが女性消防士として実際に体験してきた、アメリカに混在している消防職務上の性差別や人種差別、年齢差別、国籍差別、宗教差別のほか業務別差別と、彼女が、彼女を取り巻くさまざまな社会的圧力や内部避難などを乗り越えて、自分が正しいと思ったこと、そしてこれから「消防士を目指す女性達のため」に貫いてきた生き方が描かれています。
「Taking the Heat- Part 2- The first women firefighters of New York City」(出典:YouTube)
この映画を見ていて深く感じたのは、「なぜ、何のために人は差別する必要があるのか?」ということ、それも公的機関が組織的に行ったり、本来の職業の目的を達成するのにほぼ無関係な、地域性文化を比較したり。知っていること、また、評価や検証をしたこともないことを全部持ち出して、差別をしようとする人たちがいることです。
出典:YouTube: Taking the Heat- Part 3- The first women firefighters of New York City
差別をすることで、その差別をしている人たちの仕事が特に有利になるわけでもありません。何のための差別なのか、差別をしている本人がきちんと明確な説明や同意も得られない状態で、差別をしているという浅はかな現状です。
私もアメリカに住んでいるときに日本人として、また、アジア人として人種差別を受けたことが何度もありますが、何の根拠も関係もないことで差別を受け、不利な社会生活や環境を強いられるのは本当につらく、また苦しいものでした。
たぶん、日本に住む日本人は人種差別を感じたことはないと思いますが、それ以外の差別を受けたことがある人はいると思います。
現に日本に住む海外の国籍を持つ人の中には、不条理な差別を受け続けている人もいると思います。私個人的にはこの国際化時代、「外国人」という十把一絡げの日本人以外に対する人への表現は差別用語であり、またそのような感覚を持つこと自体、その人の中のさまざまな差別を持つ気持ちを育てる一つの要因になるような気がいたします。
一方で、特に各種差別や不平等をビジネスとして利用し、収益モデルにしている団体や企業の存在も知り、人間社会の闇の部分も垣間見ました。ただ、その差別する人たちは、世代的慣習のようなモノもありますが、家系で特定の差別を伝承していたり、また、小さい頃から教え込まれたりと差別することが当然と思い込まされている方々も多いように感じ、非常に残念に思っています。
昨今、消防職員の不祥事がほぼ毎日のように何件も全国ニュースで報道され、元消防職員として、情けなく、かっこ悪く感じます。一体、この人たちは何を考えてそれぞれの不祥事を起こしたでしょうか。彼らのSNSの書き込み内容などを調べてみると、そのほとんどが日頃から、社会性の未成熟や人間性モラルの欠如、女性の性的部分への強い興味、そして自己満足追求型の身勝手な思い込み傾向が強いことがわかりました。
これらを見抜けなかったのは、採用時の仕組みや採用試験の内容、面接時の質問の答えに対する評価と人物検証などにも問題があるように思います。
みなさんのなかで、自分が何かに対して具体的な差別や極度の区別、強いこだわりを持った方は、その表現の方向性から「犯罪を起こしやすい性格である」可能性が高いと認識を始めた方が、いざというときに予防できるかもしれません。
特に酒を飲み過ぎたときには、思わぬ言動で一夜にして信用を失ったり、また極度に性欲が強い男性は、酒を飲まなくても脳の癖で、女性に対して特定の犯罪行為を犯してしまい、一瞬にしてすべてを失ってしまいます。
たとえば今、30歳で、これから稼ぐお金の平均年収が800万円だとして、明日、浅はかな行動を起こしてしまい、職を失うことになれば、60歳で退職するはずだった予定までの30年間x800万円=2億4千万円が一瞬にして消えることになります。
消防職しか経験していない人が、再就職を探したとしても、まず、簡単には見つからず、家族が居れば、路頭に迷うことになるでしょう。
同じ人生の時間を過ごすのであれば、犯罪で一生を無にするのでははなく、また、パチンコやギャンブル、必要以上の飲酒、配偶者以外との性的満足に時間や金を費やすのではなく、ブレンダのように若いときから次々に消防関連の資格を取得したり、未来の消防士のために研究したり、活動したりすることで、人間性と社会性を高めることに時間を有効活用された方がいいと思いませんか。
世界的にも女性の犯罪主犯率は極端に少なく、現在、日本の刑務所の受刑者約6万人のうち、5万5千人が男性、5千人が女性という状況を見てもわかるように男性は犯罪を犯しやすい性質を持っているのかもしれないということを自覚して、日々の自己抑制を行うべきだと感じます。
「一人の人間の力は、世界を動かす」ことを実証したブレンダさんの功績は、世界中の女性消防士の励みとなっています。そして、ブレンダさんの意思を継承している多くの仲間が、未来の女性消防士のために具体的な改善方法を提案したり、活動をしています。
日本においても社会における女性の労働環境問題は少しずつ、改善はしてきていると思いますが、消防に限らず、まだまだ差別は根強く残っています。
できれば、国民のヒーロー的存在である男性消防士たちが率先して、女性の消防職を心から応援し、サポートし、目的を共有する同士として、お互いに尊敬して働ける職場を築いていることを社会に対してアピールし、実現&継続いただけたらと思います。
私は個人的に女性消防士達の活躍を心から応援いたします!
■女性消防吏員の活躍推進のためのポータルサイト
https://www.fdma.go.jp/josei_shokuin/
■総務省消防庁 -女性活躍- | Facebook
https://www.facebook.com/Josei.FDMA.JAPAN/
■女性消防職員の採用・職域等に係る経緯
https://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h26/honnbu_jyoseikatuyaku/01/shiryo_04.pdf
■地方公共団体における女性活躍推進の取組 - 内閣府男女共同参画局
http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2016/201609/201609_02.html
(了)
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