2020/02/03
葛西優香の23区防災ぶらり散歩
地域内の大学とも連携
小学生向けの講座のなかでは「防災クイズかるた」も実施。千代田区内にある法政大学の学生が作成したかるたです。地域内の大学とも日頃からつながりを持っているからこそ充実した企画が生まれているんですね。

「講座を受けることで『うちって備蓄品、用意しているの?』と、親がドキッとするような質問が子どもから出ます。行動に移してもらえるといいなと思います」(加藤さん)
「みらいの防災リーダー講座」に参加した子どもたちからは「水が近くまできて怖かった」「地震の揺れが大きかった」などの声が多く、ARで体験した水害の情景や実際に地震体験車で揺れを体感したことが強く印象に残ったようです。この体験が現実になった時、ふさわしい行動が取れるよう学び続けることが大切になりそうです。
「ベビーキッズ防災講座に来ていたママの勧めで、お子さんが大きくなったら『みらいの防災リーダー講座』に参加する。そんなふうにつながっていくといいなと考えています」(加藤さん)
姉妹都市と「顔の見える関係」
「姉妹都市である秋田県の五城目町や群馬県の嬬恋村へ行っています。千代田区の消防団員と一緒に各地域に向かいます。現地の消防団の方々の操法大会を見たり、情報交換をしたりしています」と話すのは、加藤さんの部下で防災調整係の木村健吾さんです。
災害時には地域や都道府県の垣根を超えて物資や人の支援が行われますが、日頃から顔を合わせているのと、発災時に初めて会話をするのとでは、いざという時の動き方や対応、スピードが変わるのでしょう。

人と対話して体制を整える
このように、千代田区の防災担当のみなさんは様々な人や機関と「顔の見える関係」を築いています。これは、区長の思いでもあるのです。
区長の口癖は「顔の見える関係」。防災も結局はそれに尽きる、と。
「やっぱり人ですね」と話す加藤さんも、ご自身の体験から、顔の見える関係の重要性を強く感じているのは間違いありません。講座や訓練の後、住民の方から寄せられる意見のなかに常に気づきを見出し、改善策を検討しています。
「失敗してどのようにリカバリーするのかを自分で考え、実践してみる」という習慣は、加藤さんが上司から教えてもらったことで「どう改善していくのかを『考える』癖がついた」そうです。今後、千代田区の取り組みはさらに推進されるのだろうなと実感するインタビューとなりました。

(了)
- keyword
- 23区防災ぶらり散歩
- 23区
- 防災講座
- 防災
- 訓練
葛西優香の23区防災ぶらり散歩の他の記事
- 第22回【特別編】再考 コロナ禍における避難
- 第21回【足立区・続編】「地域のために」できること
- 第20回【足立区】携わってわかる「自分ごと」の大切さ
- 第19回【千代田区・続編】企業の防災活動
- 第18回【千代田区】(下)「天下の千代田区」が乳幼児向け防災訓練に力を入れる理由
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方