2012/09/25
誌面情報 vol33
対象施設周辺で地震波を検知
「直下型地震など、震源に近いところでは緊急地震速報は間に合わない。 」シス テム運用上の限界としてあきらめられていた難問に挑む企業が現れた。防災シ ステムなどを開発するジェネシス株式会社(東京都港区)は、気象庁の緊急地 震速報に加え、ユーザー施設の周辺に初期微動(P波)も検知できる独自の地震計を設置することで、直下型地震にも対応できる仕組みを構築した。
同社が開発した「ガイアセンサ」 は、ユーザーの要望に合わせて、対象とする施設や工場の敷地内に3台 の現地地震計を設置する。その現地 地震計から得られるリアルタイムの 地震データと気象庁が運用してい る「緊急地震速報」のデータを用い て、対象施設に主要動(S 波)が到 達する時間や、規模をより正確に計 算し、施設・設備に被害が及ぶリス ク軽減に役立てる。
従来、 気 象庁の 緊急地震速報では、震源近くの地震計が P 波を観測してから警報が流れるまで、平均5秒程度の時間を要した。 このため、震源までの距離が短い直下型地震の場合は、警報が間に合わないということが課題とされていた。
ガイアセンサは、 対象施設の周辺でP波を独自に観測することで、 仮に緊急地震速報が間に合わなくても、独自に S 波が来る前に対策が取れる仕組みになっている。
施設の周辺で P 波検知の確度向上には、地表に設置した地震計が、 いかにノイズ(地震以外の振動)を取り除くことができるかがポイントになる。ガイアセンサでは、現地に 設置した3台の地震計のうち、2 台 以上が同じ波形を検知するか否か で、P 波かノイズかを判定する。気象庁の緊急地震速報より前に P 波を観測した場合は、コンピューター 演算により直下型地震と判断し、2秒程度で注意を喚起できる。
逆に、遠地の地震の場合には、緊急地震速報による推定値と現地の地 震計が検知した情報を総合的に考慮 することでより信頼度を高める。同社によると、最大加速度 100 ガル 程度(震度5相当の揺れ)の場合、 実質的にプラスマイナス 20%程度 の誤差で判定ができ、これは従来システムの5倍の精度に対応するという。判定にあたっては、現地の地盤 情報も取り込んでいる。ガイアセン サによって得られた情報は、あらか じめ設定した判定基準に従い標準装備されたコントローラーによって構 内放送で音声を流したり、製造ラインを自動的に緊急停止させるなどの防災・減災が可能となる。
初期費用は標準システムで 300万円から。 別途、月6万円の運用費、保守費(個別見積)が必要になる。生産ラインで大きな損害が出る
気象庁などが全国や区 1,000 ヶ所に 設置している地震計は約 25km 間隔となっているが、直下型地震対応や予測精度向上のため独自にユーザーの施設に地震計を設置する。半導体工場などを対象に、3年間で 100 件以上の販売を目指す。
誌面情報 vol33の他の記事
おすすめ記事
-
「買い物客」守る初動マニュアル 訓練で実効性担保
東北地方を代表する老舗百貨店の藤崎(仙台市青葉区、藤﨑三郎助社長)は3.11を機にBCPを策定。災害時の基本方針とワークフローを明確化するとともに以前から行っていた防災訓練を充実、各地の小規模店舗も網羅しながら初動にかかる従業員の練度を高めている。また、早期復旧と地域支援を事業継続方針に掲げ、百貨店が地域に果たす役割を問い直しつつ、取引先や顧客との新しいつながりを模索する。
2021/03/07
-
改良を積み重ねたサプライチェーン管理手法
東日本大震災では、部品供給網の寸断が大きな課題となった。その後も、災害がある度にサプライチェーン問題が顕在化している。製品に使われる部品そのものが複雑になっていることに加え、気候変動などに伴う異常気象が追い打ちをかける。日産自動車では、東日本大震災前からの継続的なBCPの取り組みと、過去の災害検証を生かしたサプライチェーン管理の仕組みにより、災害対策に手ごたえを感じ始めている。コーポレートサービス統括部担当部長の山梨慶太氏に聞いた。
2021/03/07
-
「オールハザード型BCP」への転換を提案
日本経済団体連合会(経団連)はこのほど、「非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて」と題する提言をまとめた。
2021/03/05