サンフランシスコ市とオークランド市を接続するサンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ(Panther Media/アフロイメージマート)

オークランドのレジリエント戦略

2020年のはじまりは、アメリカの都市を取り上げます。西海岸のベイエリアに位置するオークランドです。およそ200平方キロメートルの市域に42万人が暮らしています。サンフランシスコからベイブリッジを渡って対岸に位置している、というとイメージが湧きやすいでしょうか。オークランドは、アメリカ西海岸の主要な都市として、経済発展を遂げてきました。一方、経済発展の陰で広がった貧富の格差や、マイノリティコミュニティとの平等性の問題に頭を悩ませている実態もあります。

オークランドのレジリエント戦略は、協働、データドリブン、そして公平という3つのキーワードを掲げています。中でも「公平」を最も重視しています。オークランドが属するカリフォルニア州のGDPは1997年比で30%増加(2016年時点)しましたが、富を得た人はそうでない人々の収入の倍以上を得る結果となりました。レジリエント戦略では、富が公平に分配されなかった現実にどのように対応していくのかについて問題意識を持っています。

このような背景もあり、オークランドが抱えるストレス要因(長期的課題)には、まず貧富の格差が掲げられています。

【ストレス要因】
・社会経済的な不均衡―ふたつのしっぽ(富と貧困)―
・教育機会の不均衡
・より良い仕事へのアクセスの不均衡

2015年から2016年にかけて、オークランド市内のアパート賃貸料は15%、オフィス賃貸は35%も上昇しました。テック系人材が増える一方で従来のメイン産業であった製造業は縮小しています。結果として、経済指標のどこを見ても毎年数値が上がっていく顔を持つ一方で、収入が上がらない人々やマイノリティコミュニティが取り残される現象を“ふたつのしっぽ”として表現しています。21%の住民が貧困層とされており、子どもの41%が何らかの公的支援を受けています。失業率はアメリカ全体の平均(4.9%)よりも少し高い6.0%ですが、新しい雇用機会―2015年から2016年の間に、2万9500もの新たな仕事が誕生―がすべての住民に均等に与えられているわけではありません。

・犯罪率の高さ
アメリカ特有の現象と言えますが、2015年に、銃による事件で殺傷された市民の数は250人あまりで、増加傾向にあります。

・住宅供給
2012年と2015年の間に供給された1ベッドルームおよび2ベッドルームの住宅数は減少する一方、賃貸ニーズは70%から100%増加しました。需給バランスの悪さが賃料の上昇を引き起こし、低所得者に大きな影響を与えています。

・ホームレス
オークランドが属するアラメダ地域でホームレスの経験があるのは4040人に上るとの調査結果があります。アフリカ系アメリカ人の実に54%がこれまでホームレスになったことがあり、マイノリティコミュニティ(アラメダ地域でアフリカ系アメリカ人が占める割合は13%)との格差が顕著になっています。

その他のストレス要因は以下のようになっています。海面上昇については、オークランドでは2050年までに30~60センチ、2100年までに90~180センチ程度と予測されています。

・公的機関への信頼
・老朽化するインフラストラクチャー
・市の保有するリソースの限界
・干ばつ
・海面上昇

短期的なショック要因としては、次の点が挙げられています。