2017/02/10
未来のレジリエンス・テクノロジー
このように熊本では防災科研が情報を統合し、現地の災害対策本部でニーズを聞いて必要とされる情報を提供する取り組みを続けていました。本来なら、例えば県の担当者が使いなれたシステムを活用するのが理想的ですが、今回は私たちのSIP4Dを使って、県の担当者が復旧の進捗管理も行っていました。

理想的な情報共有とは情報共有システム自体がいらなくなることです。しかし、全てのシステム間での連携は難しいので、必要な情報を誰もが共有できる形にしておき、必要に応じて使い分ける方法が適していると思います。
自治体の防災システムにはたくさんの企業が参入してまさに群雄割拠。現状は、情報システムの基盤やその中の地図をそれぞれの企業が独自に作成しているので、情報共有が難しく、統合もできない。組織間で連携しようにもシステム間で連携できない状態です。
SIP4Dを開発するときに最も重視したのは、システムの陣取り合戦に参加せずに組織間連携を可能にすること。各組織で共有不可能な機密情報などもあるので、情報共有可能なものからやり取りする。情報の共有で結果的にシステム連携になるという形式を広めたい。
そこでSIP4Dにデータをため込むのではなく、どこのシステムにどういった情報があるのかカタログ情報を管理し、APIを介した情報の取得をSIP4Dが支援できるようにと考えました。
使う側の視点からみると、これまで公開されていた情報は、例えば、画像タイプやPDF、また独自の形式で使う側が共有できない仕組みで公開していました。そこで、標準的なAPIを介して活用できるような仕組み、例えば地図情報ならISOの規格に合わせる。システムを同じにしなくとも情報を共通化することで、情報が流れやすくなるのでより活用が進むと考えています。
これからはシステムの群雄割拠時代を乗り越えて、協調・競争の時代へ。基盤情報の整理と情報共有は協調し、そのうえで各社が競争して付加価値のある情報システムを提供していただきたいと思います。
■前編はこちら
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2380
(了)
未来のレジリエンス・テクノロジーの他の記事
- ドローンを組織の災害対策に生かせ!災害ドローン救援隊「DRONE BIRD」【後編】
- 地図の未来、ドローンの未来。ドローンを組織の災害対策に生かせ!【前編】
- 組織の垣根を取り払え!SIP4Dが熊本地震で活躍 eコミュニティ・プラットフォーム【後編】
- 地域住民と行政の情報を一体に!eコミュニティ・プラットフォーム【前編】
- 2020年には約11.8~13.5兆円に。急成長する国土強靱化ビジネス
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/10/14
-
走行データの活用で社用車をより安全に効率よく
スマートドライブは、自動車のセンサーやカメラのデータを収集・分析するオープンなプラットフォームを提供。移動の効率と安全の向上に資するサービスとして導入実績を伸ばしています。目指すのは移動の「負」がなくなる社会。代表取締役の北川烈氏に、事業概要と今後の展開を聞きました。
2025/10/14
-
-
-
-
トヨタ流「災害対応の要諦」いつ、どこに、どのくらいの量を届ける―原単位の考え方が災害時に求められる
被災地での初動支援や現場での調整、そして事業継続――。トヨタ自動車シニアフェローの朝倉正司氏は、1995年の阪神・淡路大震災から、2007年の新潟県中越沖地震、2011年のタイ洪水、2016年熊本地震、2024年能登半島地震など、国内外の数々の災害現場において、その復旧活動を牽引してきた。常に心掛けてきたのはどのようなことか、課題になったことは何か、来る大規模な災害にどう備えればいいのか、朝倉氏に聞いた。
2025/10/13
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/10/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方