どのような動物が鳥インフルエンザに罹患するのか?

鳥類以外の動物も罹患することが分かっている(写真:写真AC)

1980年代終わり頃まで、鳥インフルエンザは、鳥類のほかに人、あるいは豚、馬のような一部のほ乳類のみが罹患する疾病と考えられていました。現在では、さらに多くの種類のほ乳類、たとえば犬やネコ科の動物、イタチ、鼠類、アザラシ等の海獣類、クジラ、あるいはフェレットやミンクなど北方系の肉食哺乳類も、鳥インフルエンザウイルスに感染し、発病する場合のあることが分っています。

すなわち、鳥インフルエンザウイルスの宿主域は広いのです。鳥類以外の動物が鳥インフルエンザウイルスに感染して発病する場合、多くは肺炎が主な症状です。

家禽ペスト(高病原性鳥インフルエンザ)の病原体がA型インフルエンザウイルスであることが1955年に判明した結果、それ以前に分離され保存されていたすべての家禽ペストウイルス株はA型インフルエンザウイルスであることが判明しました。

また、鶏以外の外見上健康な各種鳥類(主として水かきのある水鳥)が、さまざまな種類の鳥インフルエンザウイルスを保有していることも明らかになりました。鳥類が保有している大部分のインフルエンザウイルスすなわち鳥インフルエンザウイルスは、鳥類に対して激烈な病原性を示しません。

鳥の種類によって抵抗性が違う

種類によってウイルスへの感受性は違う。鶏の感受性は高い(写真:写真AC)

興味深いことに、高病原性鳥インフルエンザウイルスに対して、鳥類はその種類により必ずしも感受性の程度は同じではないことが分かっています。家禽類の中ではシチメンチョウの感受性が最も高く、鶏やウズラがその次に高い感受性を持っているようです。

アヒルは高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染しても高い割合で生き残る(写真:写真AC)

水禽類を含む水鳥の抵抗性は、家禽類よりも高く、特にアヒル(マガモの一種)やガチョウ(ガンの一種)などは高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染しても、高い割合で生き残る場合があります。一方、野生の水鳥であるカモ類の中でも、種類が違うと高病原性鳥インフルエンザウイルス感染に対する抵抗性が異なることも最近分かりつつあります。

カモ類などの水鳥では、(水掻きを持たない)カラスやスズメなどの山鳥あるいは哺乳類と異なり、呼吸器よりも腸管下部で鳥インフルエンザウイルスは旺盛に増殖します。したがって、外見上健康なカモ類等水鳥から排泄された糞中にもインフルエンザウイルスが含まれている確率は低くありません。

したがって、外見上健康なアヒル等の水鳥の糞を介して鳥インフルエンザウイルスが拡散する危険性があるという認識を持っておく必要があります。また、マウスなどの鼠類やイタチなども鳥インフルエンザウイルスに対して、ネコ科の動物同様に高い感受性を持つことも分かっています。