2020/02/20
昆正和のBCP研究室
■さまざまな安否確認の方法
安否確認は緊急事態に直面したとき最も初期に行なう、極めて重要なアクションである。もっとも安否確認に限らず、危機対応は「事前の備え」がきちんとできて初めていざという場合に機能する。
以下では、安否確認のための複数の伝達手段、会社として事前に用意しておくべきドキュメントツールについて説明する。
(1)安否確認のための複数の伝達手段
大規模な自然災害が起こるたびに、(BCPには正しく安否確認の手順が規定されているものとして、それ以外の理由で)携帯やスマートフォンによる安否確認がスムーズにいかないという現実に直面する。これは東日本大震災以降の災害でも変わらない。

原因は携帯の故障やバッテリー切れのほか、携帯基地局の被災や非常用電源の枯渇などが原因だ。2019年9月の台風15号でも、非常用電源の枯渇で千葉県内の多くの地域で携帯が通信不能に陥った。
安否確認をスムーズに行うためには、複数の安否確認手段を用意し、コミュニケーション手段を分散して使うことが望まれる。網羅的な安否確認手段としては、以下のようなものがある。
・携帯メール
・安否確認システム(第三者による通信サービスなど)
・固定電話(+災害用伝言ダイヤル171)
・公衆電話(+災害用伝言ダイヤル171)
・SNS
・郵便はがき(緊急性は低いが相手に連絡する必要のある場合)
・徒歩や自転車(安否確認先が近場の場合)
(2)緊急連絡のためのドキュメント
緊急連絡や緊急通報を目的としたリストには2つの種類がある。一つは、消防署や救急病院、警察、不動産(ビル管理)会社、セキュリティーサービス会社などの外部機関や業者に通報、依頼をするためのリストである。
もう一つは、社内の緊急連絡網である。会社の規模によって複数の階層(経営陣/中間管理層/一般社員)に分けたほうがよいケースもある。また、従業員数十名以上の会社の場合は従業員個人用の緊急連絡ツールも作成しておきたい。社員一人ひとりが携行するカード形式の緊急連絡メモである。会社としての基本的なひな型を用意し、これを全部署に配付した後、部署ごと、または役割ごとにカスタマイズして記入するとよいだろう。
なお、営業部門など外出や出張の多い社員については、連絡がとれないときの自主的な行動ルールを社内で決めて、これを本人がカードに記入しておくと同時に、会社側でも共有しておくことが考えられる。例えば災害発生時に無理なく会社や自宅に戻れる場所にいるならば、それぞれの場所へ向かう、あるいは大規模な地震など移動に危険がともなう場合は、最寄りの避難施設を探してそこに待機するといったことである。
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