■会社としてすべきこと

震災発生当日から翌日にかけての都心部は、幸いにも都市機能や交通網の物理的な破壊や大規模な停電が起こらず、大地震(震度5強)のわりにその影響は比較的軽かったといえる。

大災害の際には風景が一変する(写真:写真AC)

しかし、もし震度7クラスの巨大地震が起こり、真夏や真冬、周囲で大規模な火災が発生したり台風の最中であったりした場合には、事態はきわめて深刻である。大混雑や大渋滞に加え、熱中症や低体温症、落下物やがれきによるケガ、パニック、行き倒れ、交通事故などにより、多数の死傷者が発生する事態も十分に考えられる。

非常時の備蓄は必須(写真:写真AC)

こうした事態を避けるために、自社の建物が安全であるならば、社員を無理に帰宅させずに社内に一晩とどめておくくらいの手順と準備、いわゆる帰宅困難者対応と非常時の備蓄は必須と考えておこう。もし会社の建物が被災して危険ならば、最寄りの避難所その他、安全な施設へ帰宅困難者を誘導するしかない(代替施設は前もって特定しておく必要がある)。

なお、帰宅困難者への対応は、帰宅が困難になった時と場所によっていくつかのパターンに分かれる。

まず社内にいる社員については、公共交通機関が再開するまでしばらく待機するか、翌日まで待ってから帰宅してもらうことを検討する。これには、帰宅時間に時差を設けることで路上の大混雑を緩和する目的もある。

外出中の社員については、出先(訪問先)や最寄りの支店、営業所などで一時待機し、時間や天候を考慮して、ある程度安全と判断した時点で会社または自宅のどちらか近いほうに戻るといった判断が必要である。

会社への来訪者も、社員と同じように帰宅困難に陥る可能性がある。この場合の対応は、オフィスにいる社員の場合と同じである。どんなに社内が混乱していても、外部の人であるという理由で対応をおろそかにしたり、無理に帰社・帰宅を促したりするようなことがあってはならない。