2017/06/21
防災・危機管理ニュース

国土交通省は20日、「高規格堤防の効率的な整備に関する検討会」の第2回会合を開催。とりまとめの骨子案を提示した。「スーパー堤防」と呼ばれる高規格堤防の今後の整備の方策について、街づくりを行う共同事業者へのインセンティブ導入のほか、コストや工期縮減などを盛り込んだ。
高規格堤防は土でできた緩やかな勾配のある堤防。幅が広く、防災以外に堤防の上を利用した街づくりを行える。しかし街づくりを行うデベロッパーなど共同事業者にとってメリットが少なく、河川管理者である国との協定締結など事業化にも時間がかかるといった課題がある。
骨子案では共同事業者への支援として、堤防の上の国有地である川裏法面敷地の占有を、共同事業者に対し認め、その事業者が持つ民有地との一体開発を認めるといったインセンティブを認める方針。盛り土や地盤改良といった堤防工事中の固定資産税の減免といった税制面優遇を検討する。
事業評価に早くても1年程度かかり、共同事業者になりうる民間事業者とタイミングが合わないケースがあることから、スピードアップを図る。また、堤防の盛り土や地盤改良と一緒に、建築物や基礎の工事を行えるようにし、コスト削減と工期短縮の仕組み作りを進める。
高規格堤防は2010年の民主党政権下での事業仕分けによりいったん廃止が決定。その後に検討会が開かれ、従来計画の約873㎞を、ゼロメートル地帯を中心とした緊急性のある約120㎞に縮小し整備を進めることとなった。3月末時点での整備状況は整備区間の約12%の約14kmで、高規格堤防の基本的な断面形状が確保されているのは約2.8%の約3.3kmにとどまっている。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
津波による壊滅的被害から10年
宮城県名取市で、津波により工場が壊滅的な被害に遭いながらも、被災1週間後から事業を再開させた廃油リサイクル業者のオイルプラントナトリを訪ねた。同社は、東日本大震災の直前2011年1月にBCPを策定した。津波被害は想定していなかったものの、工場にいた武田洋一社長と星野豊常務の適切な指示により全員が即座に避難し、一人も犠牲者を出さなかった。震災から約1週間後には自社の復旧作業に取り掛かり、あらかじめ決めていたBCPに基づき優先業務を復旧させた。現在のBCPへの取り組みを星野常務に聞いた。
2021/01/21
-
台湾をめぐる米中の紛争リスクが高まる
米国のシンクタンクCouncil on Foreign Relations(CFR)は、2021年に世界中で潜在的な紛争が起こる可能性を予測する最新の報告書を公表した。報告書は、台湾問題における米国と中国の深刻な危機を、世界の潜在的な紛争の最高レベルとして初めて特定した。
2021/01/20
-
これからの国土づくり 「構想力」と「創意工夫」で
政府の復興構想会議のメンバーとして東北の被災地を訪ね、地域の再生や強靭な国土づくりに多くの提言を行った東京大学名誉教授の御厨貴氏は当時、これからの日本の行方を「戦後が終わり、災後が始まる」と表現しました。あれから10年、社会はどう変わったのか。いつか再び起こる巨大地震をめぐり、政治・行政システムや技術環境、市民の生活や仕事はどう進歩したのか。これまでを振り返ってもらいながら、現在の課題、今後の展望を語ってもらいました。
2021/01/14