これまで、中小企業が防災活動に取り組む場合、どのような手順で進めるべきか、そのポイントを説明してきました。

防災活動を行った結果、災害による被害が最小化できた場合でも、その後の復旧に時間がかかると顧客が失われ、自社の経営に大きな影響が出かねません。そこで、被災後は速やかに復旧を進め、事業継続につなげることが求められます。

今回からは、防災の次に考えることとして、BCP(事業継続計画)の概略を説明します。

防災活動の次に考えること その1:BCP(事業継続計画)の概要

1. BCPの重要性

過去の大きな災害、例えば阪神・淡路大震災や東日本大震災などによって、企業が甚大な被害を受け、その結果として自社の事業を継続できなくなった事例が多く見られます。また自社に被害がない場合でも、部品や仕掛品を供給する協力事業者が被災すると、その影響を受け、自社の事業を中断せざるを得なかった企業も多くありました。

このような状況に陥っても、企業が生き残り、そして顧客や社会への商品・サービスの供給責任を果たすために、BCPを策定することが重要です。

また法律においても「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律」、いわゆる「中小企業強靭化法」が成立し、2019年7月16日に施行されています。この法律のもとでは、中小企業のBCPを認定する制度のほか、中小企業の災害対応力の向上に向けてさまざま取り組みが行われています。

2. BCPとは何か

「事業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―(平成25年8月改定)」[内閣府(防災)]では、BCPを次のように定義しています。

事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)
大地震などの自然災害、感染症のまん延、テロなどの事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、また中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順などを示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。


(1)中断した事業を元に戻して継続するためだけの計画ではない
BCPは「中断した事業をできるだけ短い時間で元に戻して、事業を継続していくためのもの」と考えている方が多いと思います。しかし、それ以前に不測の事態が起こった場合も、まずは事業を中断させないように準備しておくことが大切です。

それでも大きな地震が起こり、水害に見舞われた際には事業が中断することが考えられますので、残された経営資源を生かして事業を復旧させ、事業の継続を円滑に実現するための計画です。