パンデミック対応計画の評価

まずパンデミック対応計画がどの程度うまくいったかを振り返った設問の結果から見ていくが、ここで「計画」は「plan」ではなく「planning」であるから、作成された計画のことだけを指しているのではなく、パンデミック対応が始まってから新たに対応計画を立てたり、その計画を実行しながら日々修正したり、というような行為も含まれている。

本調査においては回答者の40.4%が「パンデミックを対象とした計画(pandemic-specific plan)を持っていた」、48.2%が「対象をパンデミックに限定しない全般的な計画(generic plan)を持っていた」と、それぞれ回答しているが、図1 はその計画のタイプ別に、「計画(planning)がうまくいきましたか?」という設問に対して「Yes」と回答された割合を示したものである(注4)。

やはりパンデミックを対象とした計画を持っていた組織の方が、うまく対応できた割合が高くなっているが、本報告書ではどちらかというと計画のタイプ別の比較よりも、あらかじめ計画が作られていなかった組織(「No plan」と表示されているもの)との差が大きいことに着目しており、この結果は事業継続の実務者にとって、包括的なBCPを作っておくことの必要性を経営層に対して証明し、説得するための証拠として役立つと言及されている。

写真を拡大 図1. 対応計画がうまくいった割合(計画のタイプ別)(出典:BCI / Coronavirus - A Pandemic Response 2020)

次に、パンデミック後の変化について調査した結果を見ていきたい。図2はパンデミック収束後に事業形態がどのように変わると予測しているかを尋ねた結果である。最も多いのは「リモートワークの活用を増やす」で81.3%、次いで「仮想環境におけるイベント(オンラインセミナーなど)の実施を継続する」が65.1%となっている。パンデミックの影響で、リモートワークやオンラインセミナーなどといったスタイルや、これらを支えるITの活用に、組織も従業員も慣れてきたため、今後はそのメリットをさらに追求していく姿勢が現れてきたといえよう。また、組織のレジリエンスに対する投資を増やす、サプライチェーン戦略を見直す、という組織が多いことも注目に値するであろう。

写真を拡大 図2. パンデミック収束後に予想される事業形態の変化(出典:BCI / Coronavirus - A Pandemic Response 2020)