茂木氏はカタール危機が日本に与える悪影響を分析した

デロイト トーマツは27日、「グローバルビジネスリスク記者勉強会」を開催。デロイト トーマツ企業リスク研究所主任研究員の茂木寿氏がカタールとサウジアラビアなど周辺国の断交や、ベネズエラのデフォルト危機、日本のハラスメントへの注目の高まりについて解説した。

6月、サウジなど中東6カ国がカタールと断交を宣言。カタールがサウジと険悪なイランと良好な関係であることなどが背景にある。6カ国は関係修復の条件として、衛星放送局アルジャジーラの閉鎖やイスラム主義勢力「ムスリム同胞団」との関係断絶など13項目の要求を行ったが、カタールは拒否している。サウジとの国境閉鎖や周辺国と空路が途絶えていることもあり、イランやトルコがカタールに物資を空路で供給している。

茂木氏は「カタールは周辺国との連携でもってきたところが大きい。サウジは2011年のアラブの春の際、バーレーンに軍隊を派遣し鎮圧しており、最悪カタールにも同じことをするかもしれない」と警戒した。カタールと関係が良好な西側諸国についても「具体的な手を打てず、注視することしかできないだろう」と述べた。

日本にとってカタールはLNGの供給国で、豪州、マレーシアに次ぐ12.8%を輸入。またカタールは2022年サッカーW杯開催国で、日本企業も多くのインフラ整備プロジェクトに参画している。今後の展開によってはLNG供給が不安定化し、日本での電気料金や生産原価の高騰、プロジェクトの中止による日本企業への損害といった悪影響の可能性があると茂木氏は分析した。

ベネズエラは原油価格の下落や対米関係の悪化で外貨準備高が減少し、デフォルトの危機にある。同国に進出した自動車メーカーは部品の輸入ができず、2016年1月以降生産を停止している。今後、ベネズエラでは輸出入が困難になり燃料や原材料不足により生産工場の停止、必要な外貨がなく、従業員への給与支払いといった資金繰りが困難になる事態が予想されるとした。

ハラスメントでは厚生労働省の2016年度労働相談件数調べで「いじめ・いやがらせ」が前年度比6.5%増の7万917件で5年連続最多。ハラスメントの種類が多様化しており、従業員がSNSで被害を発信し情報が加速度的に拡散するリスクもある。また海外拠点でもハラスメント対策は重要で、茂木氏は「内部通報の仕組みをグローバルに作りたいという企業の相談が増えている」と述べた。

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リスク対策.com:斯波 祐介