官民ともに取り組み強化

英国では、NCSCがサイバー脅威への対応を主導している。その一環として、今回の新型コロナウイルスのパンデミックにおけるサイバー攻撃への注意喚起の声明を発表した。今回の対応で中心となっているのが、一般の人々および企業を対象とした、明確かつ根本的で実務的なアドバイスを提供するCyber Awareプログラムだ。これをサポートするのは、個人事業主から大企業までを想定して作成された一連のオンラインリソースである。英国と日本の主な違いは、NCSCが英国政府全体を代表しているのに対し、日本ではさまざまな政府機関や部門が新型コロナウイルスによる危機下でのサイバーセキュリティーの課題について、それぞれのセクターにアドバイスを提供していることである。

英国のサイバーセキュリティー業界も、この事態に対応しアドバイスを提供してきた。その一例として、英国の法執行機関の支援を受けた業界団体のFraud Advisory Panel (詐欺諮問委員会)は、新型コロナウイルス関連の詐欺に関するアドバイスを提供している(https://mailchi.mp/fraudadvisorypanel/fraud-advisory-panel-covid-19-fraud-watch-group-member-update-3150845?e=92fc48cace)。850人の会員を有する英国の主要なテクノロジー企業の業界団体であるTechUKは、新型コロナウイルスに関連する諸問題のための情報ハブを設置した(https://www.techuk.org/covid-19-information-hub)。ウェールズのサイバーセキュリティークラスター、CyberWalesはより実務的なレベルで、国民保健サービス(National Health Service, NHS)の支援要請を受けてIT運営の維持をサポートしている(https://cyberwales.net/en/news/)。

サイバーセキュリティーがリスク管理業務の中心に

新型コロナウイルスは、サイバーセキュリティーに対して従来とは異なる課題を突き付けている。現在の状況により強固となったのは、企業や組織がサイバーセキュリティーをリスク管理業務の中心に据えなければならないということである。いずれにしても、新型コロナウイルスを契機に、今後私たち個人の生活やビジネスはさらにオンライン化が進むだろう。その中でサイバーセキュリティーは一層重要なものとなる。英国と日本のように、安全保障において強固な関係にある国々は、両国の政府や経済界の間でノウハウや専門知識を共有するのに最適な関係にあると言えるだろう。

今後のコラムでは、英国各地で成長を続けるサイバークラスターを取り上げる。次回はそのうちの一つで、産学官が一体となって活気あるサイバーセキュリティーのエコシステムを形成している、北アイルランドのサイバークラスターを紹介する。