2020/06/18
英国のサイバーセキュリティー
官民ともに取り組み強化
英国では、NCSCがサイバー脅威への対応を主導している。その一環として、今回の新型コロナウイルスのパンデミックにおけるサイバー攻撃への注意喚起の声明を発表した。今回の対応で中心となっているのが、一般の人々および企業を対象とした、明確かつ根本的で実務的なアドバイスを提供するCyber Awareプログラムだ。これをサポートするのは、個人事業主から大企業までを想定して作成された一連のオンラインリソースである。英国と日本の主な違いは、NCSCが英国政府全体を代表しているのに対し、日本ではさまざまな政府機関や部門が新型コロナウイルスによる危機下でのサイバーセキュリティーの課題について、それぞれのセクターにアドバイスを提供していることである。
英国のサイバーセキュリティー業界も、この事態に対応しアドバイスを提供してきた。その一例として、英国の法執行機関の支援を受けた業界団体のFraud Advisory Panel (詐欺諮問委員会)は、新型コロナウイルス関連の詐欺に関するアドバイスを提供している(https://mailchi.mp/fraudadvisorypanel/fraud-advisory-panel-covid-19-fraud-watch-group-member-update-3150845?e=92fc48cace)。850人の会員を有する英国の主要なテクノロジー企業の業界団体であるTechUKは、新型コロナウイルスに関連する諸問題のための情報ハブを設置した(https://www.techuk.org/covid-19-information-hub)。ウェールズのサイバーセキュリティークラスター、CyberWalesはより実務的なレベルで、国民保健サービス(National Health Service, NHS)の支援要請を受けてIT運営の維持をサポートしている(https://cyberwales.net/en/news/)。
サイバーセキュリティーがリスク管理業務の中心に
新型コロナウイルスは、サイバーセキュリティーに対して従来とは異なる課題を突き付けている。現在の状況により強固となったのは、企業や組織がサイバーセキュリティーをリスク管理業務の中心に据えなければならないということである。いずれにしても、新型コロナウイルスを契機に、今後私たち個人の生活やビジネスはさらにオンライン化が進むだろう。その中でサイバーセキュリティーは一層重要なものとなる。英国と日本のように、安全保障において強固な関係にある国々は、両国の政府や経済界の間でノウハウや専門知識を共有するのに最適な関係にあると言えるだろう。
今後のコラムでは、英国各地で成長を続けるサイバークラスターを取り上げる。次回はそのうちの一つで、産学官が一体となって活気あるサイバーセキュリティーのエコシステムを形成している、北アイルランドのサイバークラスターを紹介する。
英国のサイバーセキュリティーの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方