緊急事態の際に携帯すべきものは何か:持出袋

持出袋は急に自宅あるいは職場を離れなければならないときに持っていたい必需品を集めたものだ。バックパックやキャリヤー付きの小さなスーツケースのように頑丈で持ち運びのしやすいものでなければならない。持出袋の中身は自分用にあつらえたものにしたいと思うだろう。しかし考慮すべき大事なものとしては、重要な書類(保険証・出生証明書・写真入り身分証明書・住所証明書など)のコピー、自動車と自宅の予備の鍵、クレジットカードのコピー、200ドル程度の現金(少額紙幣)、ボトルウオーター、(エネルギー・グラノーラバー)、懐中電灯、電池式AM/FMラジオ、家族の服薬リスト、がある。

障がい者ならば特別食・飲料、医療ブレスレットあるいは警告事項、予備のメガネ、補聴器用電池がある。

ペットの必須アイテムを入れるのを忘れない。特別な予備の首輪、首紐、薬、クレートあるいは丈夫なキャリヤー、毛布、最近のペットの写真(離れ離れになってしまい探さなければならないときのために)がある。

緊急事態の際に頭に入れておくべきこと:家族の緊急事態計画

家族の緊急事態計画は家族のためのコミュニケーションの計画である。家族の緊急事態計画づくりは“もし起きたらどうするのか?”というシンプルな問いで始まる。

もし何かが起きたら、家族とは一緒でない、どうするのか?どのように連絡をとるのか?どうしたら彼らが無事だとわかるのか?自分は大丈夫だと彼らに伝えるにはどうしたらいいのか?

災害時には家族との間で情報のやりとりが必要だ。あなたの家族の緊急事態計画は、速やかにかつ安全に家屋を立ち退く計画、離れ離れになった家族が落ち合う場所の名前、1~2の市外にいる親族のコンタクト情報を載せた電話番号のリスト、SNSのプラットフォームで連絡を取り合うための計画を含むものでなければならない。

計画を作成したら、膝を突き合わせてそれを確認し、最新のものにするために愛する家族を説得する。

緊急事態の際に自宅に備え置くもの:緊急事態供給キット

緊急事態供給キットは、緊急事態の際にあなたの家族が必要とするだろう食料・水・医薬品などを含む基本的な品目を集めたものである。地元の係官や救助担当者があなたのところに来るまでには数日がかかりうるので、自力で生き延びることが求められる。

あのいらつく緊急事態警報システムの音が携帯電話で鳴った後では、買い集めている時間はないだろうから、今すぐキットを備えよう。

理想的な緊急事態供給キットとは2、3週間やっていくのに必要な全てのものを含むものであるが、おそらく数日のうちに使い尽くされ、その後は援助を必要とするだろう。

個人の備えを超えて:共同体における災害準備の基本

大災害後の環境においては、あなたの家庭に届く最初の援助はほとんど常にあなたの隣人からのものである。だから共同体の準備が重要なのだ。今日、すでに述べたように、個人・家族・企業・奉仕団体・地域団体・非営利グループ・学校を含む共同体の全てが、それぞれ手いっぱいである。そうした忙しさが、自己満足や古き良き先送りとも相まって、準備における真の前進を妨げている。

欠落しているものはもちろんリーダーシップだ。程度の差はあれ共同体の準備が進んでいるのは、草の根の取り組みの先頭に立つために時間と才能をささげる個人がいるからだ。

それらの熱意ある個人が国中の居間や教会の地下室で人々を招集している姿を想像してみよう。彼らは煉瓦壁の向こう側にある危険を詳しく説明することによって、ものぐさや受け身の抵抗を押し切っているのだ。9.11後のニューヨーク市でOEMが市の機関を先導するのに用いたのと同じ構築のプロセスによってそれぞれの共同体に力を与えている。計画、実践、資源の収集、そして真の能力の涵養だ。

もしそれが無謀なことのように思われるならば、それは無謀だからだ。今日、誰が時間とエネルギーを持っているだろうか?難しく見えるかもしれないが、緊急事態計画のために隣人に手を差し伸べることは、それほど困難なことでなくてもよい。ニューヨーク市健康精神衛生局のミッチ・ストリップリング副局長によれば、一軒一軒隣人のドアをノックするかわりに、あなたが本当にやらなければならないのは、あなたの近所ですでに活動しているグループ、共同体の理事会、PTA、教会、さらには読書会やスポーツクラブなどに正面から取り組むことだ。鍵となるのは災害準備を興味深い、受け入れやすい方法で議題にのせることだ。

災害準備に焦点を当てたPTAミーティング、あるいは災害準備のためのバートリビアナイト(バーで行うクイズイベント)を予定することもできる。あなたの地元のコーヒーショップがゴジラを知る会の会場になることもありうる
—“あなたの共同体における災害準備をどう行うか” 
ニューヨークタイムズ、2018年2月15日

彼らが注目してくれたならば、共同体の災害準備について考えることを始める。具体的である必要はない。ゴールはみんなが近所のこと、そして災害の前後を通して、いかに互いに助け合うか、をより良く理解することだ。

ストリップリングによれば、共同体災害準備計画には、自分たちがテキストメッセージ、固定電話、落合場所によってどのように繋がっているかを知ることのできる連絡先リストがあると良いとのこと。

高齢者・独居者・障がい者・アクセスや機能の補助を要する人など危険な状態にある人はより大きな災害の影響を受けるということに留意しよう。

災害が起きる前に、危険な状態にある隣人と継続的な関係を作ることにしよう。彼らと彼らのニーズを知ることを始めよう。災害の初期に彼らの安否を確認しよう。ニーズの高い人たちに手を指し伸ばすことによって、災害対応の前線に立つのだ。危険な状態にある人と家族を直接援助することもできるし、あなたの近所を一軒一軒訪問して回る救助隊の個別訪問チームのためにその情報を提供することも可能である。

(続く)

翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300