局地的な雷雨の予測はできるのか?

図1で取り上げた山梨県山梨市の例に話を戻します。局地的な大雨に見舞われたこの日、どのような防災気象情報が発表され、警戒が呼びかけられていたのでしょうか?

記録を見ると、雨雲が発達し始めた当時には、雷注意報しか発表されていませんでした。山梨市に対して大雨注意報が発表されたのは局地的な集中豪雨が始まった後、さらに大雨警報に切り替わったのは雨のピークを超えた後のことです。土砂災害警戒情報も発表されましたが、その時点では雨雲自体は衰退しています(下図参照)。

写真を拡大 図3. 注意報や警報などが発表された時点の雨雲の様子(気象庁のデータをもとに筆者が作成)

局地的な豪雨が突然発生するような例の場合、大雨の注意報や警報が後追い的に発表されるケースは少なくありません。気象予測では、雷雲が急発達するかもしれないという全体的なきな臭さまでは把握可能ですが、大雨をもたらす雨雲が「いつ現れるか」「どこに現れるか」「どの程度の雨量となるか」などを事前に詳しく予測することはなかなか難しい状況です。このため、実際に雨雲が発生・発達し、気象レーダーのエコーや10分間の雨量などを見て危ない場所が確認できた時に初めて注意報や警報などの情報が出る場合があるわけです。

こうした急発達するタイプの豪雨に備えるためには、雨雲が急に発達する気象条件が見込まれるのかを把握しておくとよいでしょう。テレビの気象情報などで、「上空に寒気」「大気の状態が不安定」といったキーワードが伝えられるのであれば、大雨になる可能性がある日だと判断できます。「雷注意報」もそうした可能性を示す情報の一つです。

また、最近の気象ニュースでは雷が発生する確率(発雷確率)を示した図を使って解説がなされることもあります。発雷確率が高い場合には、急発達するタイプの大雨となる可能性を念頭に入れておきましょう。

雨雲が急発達した時に確認すべきこと

雨雲が急発達した時には気象レーダーや雨量の情報を使って次の二つのポイントを確認し、危険性や影響を判断しましょう。

1)雨雲の動き具合とスピード

同じ所に長時間停滞する場合には雨量がまとまりますので、どの程度のスピードで移っていくのかを見定めましょう。雨雲が発生し始めた時間に遡り、現在までの様子を見ていくことで進行スピードを把握します。

雨雲がほとんど停滞していたり、別の場所に移っていくスピードが遅かったりする場合には、雨量がまとまる可能性があるため危険と判断します。

2)雨雲の直下での雨量

雨雲の下でどの程度の雨量となっているのか確認します。この時に見るべきものは1時間雨量ではなく10分間雨量です。アメダスの雨量計は約17キロ四方に一つの割合で全国的に設置されていますが、雨雲の大きさがそれよりも小さいことがあります。アメダスのデータだけでは雨量をうまく捉えられないことがあるため、都道府県や市町村が設置している雨量計の情報なども併せて確認するとよいでしょう。

このようにして把握した雨雲の動き具合やスピード、雨量を元に影響を判断していきます。10分間雨量を6倍すれば大まかな1時間雨量が分かりますので、その雨量なども使って浸水の可能性などを見ていきます。感覚的にですが、10分間雨量が10〜15ミリ、15〜20ミリ、20ミリ以上と上がるにつれて影響も大きくなります。

※実況監視ツールの例
気象庁の「雨雲の動き(高解像度降水ナウキャスト)」
https://www.jma.go.jp/jp/highresorad/index.html
アメダスの10分間雨量も表示させて雨量を確認するとともに、都道府県や市町村の雨量計データも見ていくのがおすすめ

急発達するような雨雲の場合は、対応するための時間的な余裕がどうしても限られます。そうしたタイプの豪雨に対して災害リスクが特に高い場所では、ごく短時間でできる対応を検討・準備しておいたり、急な大雨に見舞われても被害が限定的なレベルにとどまるような事前対策(例えば内水氾濫対策としてのかさ上げなど)を講じておいたりすることなどが求められます。