2020/08/31
知られていない感染病の脅威
消毒用エタノールの抗菌・抗ウイルス効果
エタノールは容易に細胞の膜を透過します。しかも一定以上の濃度では、細菌の細胞膜など脂質を含む膜やタンパク質を変性させる作用で殺菌作用を示します。

またウイルス、特にウイルス粒子表面に、コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどのように脂質を多く含むエンベロープをもつウイルスに対しては、エタノールがエンベロープの主構成成分である脂肪に反応して、これを破壊することにより感染力を消失させることが分かっています。
エタノール濃度が60%以上あれば有効であると厚生労働省は認識しています。消毒用エタノールの消毒効果は一過性であり、揮発してアルコール濃度が下がれば効果も消失します。抗菌・抗ウイルス作用は持続しません。
消毒用エタノールの使用にあたって
実際に消毒用エタノールを手指の消毒のために使用する場合には、次の点を改めて熟知しておく必要があります。
手指・皮膚の消毒、手術部位(手術野)の皮膚の消毒、医療機器の消毒
2.用法及び用量
消毒用エタノールをそのまま希釈せずに消毒部位に塗布する
3.使用にあたっての注意事項
1)刺激作用を有するため損傷皮膚及び粘膜に使用してはならない【禁忌】
2)眼に入らないよう注意すること。誤って入った場合には水でよく洗い流すこと
3)広範囲又は長期間使用する場合には、蒸気の吸入に注意すること。なぜなら、エタノール蒸気に大量に又は繰り返しさらされた場合、粘膜への刺激、頭痛等を起こすことがある
4)皮膚面の同一部位に反復使用した場合には、脱脂等による皮膚荒れを起こすことがある
5)血清、膿汁などのタンパク質を凝固させ、内部にまで浸透しないことがあるので、これらが付着している医療器具等に用いる場合には、十分に洗い落としてから使用する必要がある
6)金属器具を長時間浸漬する場合には、腐食を防止するために0.2 ~1.0%の亜硝酸ナ トリウムを添加する必要がある
4.消毒用エタノールの副作用
1)過敏症、発疹など出現することがある
2)皮膚に刺激症状の出現することがある
5.保管上などの注意
1)密栓し、火気を避けて冷暗所に保存すること
2)保管している容器のキャップを取るときは、液が飛び出さないように容器の肩部を持ちキャップを開封すること
以上より、消毒用エタノール使用に際し、留意せねばならない注意点が少なからずあることが分かります。特に皮膚の敏感な人の手指消毒には消毒用エタノールの使用は不向きで、アルコール成分を含まない安全性の高い別の消毒剤の使用が推奨されます。
知られていない感染病の脅威の他の記事
- 西日本で高病原性鳥インフルエンザの発生相次ぐ
- 多臓器不全を起こし死に至るケースもある
- 2つの流行期を持ち毎年400~600人が罹患
- 感染予防に欠かせない消毒剤の適切な選択と扱い
- マダニ咬傷だけでなく犬や猫からも感染
おすすめ記事
-
-
-
組織の垣根を越えるリスクマネジメント活動
住宅建材・設備機器メーカー大手の株式会社LIXILHOUSING TECHNOLOGYは「体系化」「情報」「活動」の3軸をベースにリスクマネジメントを展開。重点活動の一つが、自然災害リスクに対する対応力向上活動です。災害による被害の最小化は住宅建材設備を供給する者の責任と位置付ける同社の取り組みを紹介します。
2023/03/19
-
コカ・コーラにおけるリスクマネジメントERMとリスク対応計画の枠組み
ザ コカ・コーラ カンパニーは、ビジネスにおいて何らかのリスクが発生し悪影響を及ぼす可能性があることを認識し、それらに対処するプロセスを展開しています。日本においても、日本コカ・コーラをはじめ全国のコカ・コーラボトラーズ各社と連携を図っています。包括的企業リスク管理(ERM)プログラムによって、ビジネスに破壊的な影響を及ぼすリスクの軽減戦略を実行すると同時に、ビジネスの機会を積極的に模索しスマートにリスクをとることを可能にしています。取り組みの内容を日本コカ・コーラ株式会社 広報・渉外&サステナビリティ推進部 リスクマネジメント&クライシスレゾリューション シニアマネジャーの清水 義之さんにご発表いただきました。2023年3月14日開催。
2023/03/16
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年3月14日配信アーカイブ】
【3月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:いよいよマスク着用ルール緩和
2023/03/14
-
ダイバーシティ&インクルージョンは足元から
日本企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」に注目する背景には、少子高齢化のなかで労働力の確保が難しくなっている状況があります。一方、地域社会も同様の課題に直面。コミュニティーを支える人材の不足から、福祉や防災の機能不全が顕在化しています。両者が抱える課題の同時解決に必要なイノベーションを考えます。
2023/03/13
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方