リスク対策.comでは、新型コロナウイルス感染症への企業の備えとして、今年1月から毎月1回、計4回にわたる調査を実施してきたが、5回目の調査は「首都圏を中心としたレジリエンス総合プロジェクト(総括:国立研究開発法人 防災科学技術研究所 首都圏レジリエンス研究センター長 平田 直氏)」(以下、首都圏レジリエンスプロジェクト)と連携し、これまでの調査結果を踏まえ、より総合的な調査内容である「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係るBCP(事業継続)に関する緊急調査」とした。

具体的には、COVID-19に対する企業などの対応の流れを時間軸でとらえ、現時点での感染対策や事業継続に向けた取り組みレベル、経営への影響、さらには組織に従事する個人の心的負担などについて明らかにし、これらの対応の経験を、自然災害時の対応に生かすことなどを目的とした。調査対象は、リスク対策.comのメールマガジン購読者、首都圏レジリエンスプロジェクト・データ利活用協議会の会員をはじめ、他の研究会の参画組織・団体にも協力を呼びかけた。5月11日(月)~15日(金)の短い調査期間ではあったが、計615の回答を得た。

リスク対策.comでは、速報性に重きを置き、まずは自動集計機能による単純集計を実施した。その結果、社会の変化に対応し、職場や組織で感染対策が進む一方、実施が難しい取り組みや、稼働レベルが変えにくい職務が浮かび上がってきた。また、事前の感染症への備えが必ずしも十分ではなかったことも明らかとなった。今後は専門家と連携し、さらに詳細な分析に取り組む予定である。

マスクの着用、いまだ義務付けできず

全国を対象に緊急事態宣言が発出されていた調査開始時点において、各職場での感染防止策はどの程度行われていたのか。調査では、体温測定、行動規則、手指消毒、マスク着用、トイレにおける感染症対策の5項目について、その実施レベルを、1. 実施していない、2. 推奨している、3. 義務付けている、4. 職場の出勤者はいない、の4段階のどれに当てはまるか聞いた。

その結果、トイレにおける感染症対策を除いては、「推奨している」を「義務付けている」割合が上回った。しかし、マスクの着用ですら、30%程度の組織でいまだ義務付けができていない現状も明らかになった。トイレにおける感染症対策は、業者任せなのか、義務付けているとの回答はわずか2割強だった(グラフ1)。

出勤形態については、政府の呼び掛けもあったことから、テレワークがかなり進んでいることが分かった。「一部がテレワーク、残りは出社」との回答は46.7%と半数に迫り、「原則全員がテレワーク」との回答も35.4%あった。なお、一部テレワークの割合については、具体的に数値を記入してもらったが、5割以上の値が半数を超えた(グラフ2)。

対面を避けるための新たな職場での対策としては、「一部拠点の閉鎖」「間引き出勤」「スプリットチーム制(同一業務を複数のチームに分けて実施)」「勤務時間の分散」「三密を避けた職場レイアウト」から該当する項目を全て選んでもらった。結果は、「三密を避けた職場レイアウト」が39.1%と最も高く、「スプリットチーム制」が36.1%と僅差で続き、さまざまな工夫が進められていることが分かった。緊急事態宣言が解除された今後、時間経過とともに、どのようにこれらのレベルが変化していくのか注視したい(グラフ3)。

また、グラフは省略するが、国内出張や移動については「原則中止」「同一都道府県内なら可能」「特定警戒都道府県には禁ずる」など、対策のレベルを聞いたが、76%が「原則中止」で、海外に至っては85%が「原則禁止」にしている状況が明らかになった。