2014/05/25
誌面情報 vol43
被災状況に応じた支援体制を構築
東日本電信電話(以下、NTT東日本)は、GIS(地理情報システム)を活用した独自の情報共有システムにより、災害対策本部が速やかに現地の復旧作業などを支援できる体制を構築している。現地が撮影した画像や動画を、地形や建物の形まで精密に反映させたGISシステム上で即時解析し、それを支店や本社が共有する。位置情報も備えており、現地の状況に応じた迅速な支援を可能にする。
「どのくらいの電柱が津波で被害を受けたんでしょうか?」「概算になりますが、2万8000本程度かと推定しています」。2011年の東日本大震災時に、実際に報道機関とNTT東日本広報室の間で行われた会話の一部だ。この概算数字の算出にあたり活躍したのが、NTT東日本の危機管理情報システム。子会社であるNTT空間情報が作成した国内トップクラスの精度を有する地理情報システム(GIS)を使用し、電柱や電線などのケーブル、マンホールに至るまで同社の設備に関する詳細な情報が入力されている。航空写真や衛星画像を基に作成されているため、位置情報だけでなく、施設の形状、周辺の地形情報まで反映され、その適合精度は国土地理院地図情報の原典データへ採用されるほどだ。
東日本大震災では、津波による被災エリアの情報を、このGISに重ね合わせることで、被災した電柱の本数の概算が可能になった。災害が起きた時に報道機関など外部から電柱の倒壊状況を聞かれることが多いため、GISを被災部分と重ね合わせることで自動集計する機能を持たせているという(図1)。
NTT東日本の危機管理情報共有システムの特長は、それだけではない。GISに画像や動画を載せることで平時から現場作業班と支店、本社災害対策室らが情報を共有できるようにしている。
例えば、北海道のある地域で、電柱に付属する機器が豪雪のため故障し、サービス部隊が修理に向かったとする。しかし現場にたどり着いたものの周辺が雪で埋もれて近寄ることができない。このような時には、現場に到着した社員が携帯電話のカメラで写真を撮って危機管理情報共有システムに送る。携帯電話のGPS(衛星測位システム)機能をオンにしてシステムに送信すると、正確な現地の場所と画像データ、被災前の施設データなどがGIS上に表示される仕組みだ(図2)。
それを各支店が確認することで、必要な手配を早期に行うことができる。この案件なら、写真を分析することで何メートルくらいのバケット車(高所作業車)が必要かも分かる。位置情報により、どこから作業車を手配すれば一番効率が良いか即時に判断できるほか、どの道が雪により通行困難かも分かる。
動画の共有で対応をナレッジ化
NTT東日本は、このシステムを使用して静止画だけでなく動画を共有する取り組みも始めている。現在、同社が保有するほとんどの作業車には、動画を撮影するビデオカメラと、その送信装置が搭載されている。災害時には、車から被災地の状況を撮影しながら調査し、そのライブ映像を対策本部で見ることが可能だ。もちろん動画ファイルはサーバーに蓄積されていくので、後から見直すこともできる。例えば電線などのケーブルが断線した場合には、ビデオカメラでライブ中継しながら対策本部に作業の指示を仰ぐ。その様子を記録しておき、社内で共有すれば情報のナレッジ化にもつながる。ビデオカメラの使用や対処方法は基本的に現場の判断に任されているが、対策本部が現場の報告内容が分からない場合にライブ中継を指示することや、現場からうまく説明できないので動画で見てほしいと要請することもあるという。送信装置にはGPS情報もついているので、作業車から撮影していればGIS上での追跡も可能だ。
また、地図データにはNTT東日本が所有する施設データもすべて入力されているため、どのように現地に行けるかナビゲートも可能だという。津波の高さなどの情報を入力すれば、被災道路を避けて現地に向かうこともできる。
このシステムのもう1つの大きな利点は、本社の災害対策本部や全国支店の対策本部と、常にシステム上で情報共有をしているため、各対策本部が、本社に細かい報告を上げる必要がないことだ。本社からは常に被災現場の状況がシステムで確認できているため、危なそうであれば周りに応援要請ができる。復旧に専念している現地対策本部の作業の軽減にもつながる。
誌面情報 vol43の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-









※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方