福田教授は普段からの備えの重要性を訴えた

災害対応にも通じる

ミサイル危機の特徴は「目に見えない」「時間との戦い」の2つ。ミサイルが飛んでくるのは目視できないことから、情報こそが重要になる。また例えばミサイルが関東に到達するのは発射から約7分。Jアラートの情報が住民に伝達されたあと、住民が避難に使える時間は2~3分程度しかない。「防災行政無線や携帯電話、ラジオなどJアラートの情報を得るためのメディアや環境を確認して準備することが重要」と福田教授。さらに「避難や対応行動など約2分間で何ができるかをシミュレーションしておく必要がある」と説明。地下に避難する、難しければ建物内で窓から離れて安全な空間に退避するといったことが万が一の際にできるよう備えるべきだとした。

さらに「長期的に考える」ということが重要と福田教授は説明。「ミサイルが実戦配備宣言されたら、それ以後のミサイル発射は、Jアラートの段階で実験なのか、攻撃なのか区別がつかない。しかも着弾しないと通常弾頭か核弾頭かもわからない」とし、「もし核攻撃であれば仮に地下などに避難して生き残ったとしても、その後の放射線や放射能への対応など長期的な対応を検討する必要がある。」と危惧を述べた。

事業継続の視点から職場や学校で考えておくべきこととして福田教授は「時間軸で考える」ことを指摘。朝や夜にミサイル発射があった場合、社員の出社、生徒の出校を検討する。勤務中、昼間の発射に備えて職場でJアラートが聞こえる環境を整えておく。屋内退避させる、または地下があればそこに避難するなどの危機管理のガイドラインを作る。「災害対応BCPにうまく落としこんで作ることはできる」と語る。「交通機関やショッピングモールといった集客施設はとにかく迅速なアナウンスが大事。Jアラートの発動と簡潔な対応行動を伝え、誘導しないといけない」と事業者による利用客誘導、避難計画の必要性を指摘した。

「これまでの国民保護の計画や訓練はテロ事件が中心であったが、現在はミサイルや軍事侵攻まで検討せねばならない国際環境となった」と福田教授。国民保護事案についての訓練やマニュアル整備といった備えは企業にも求められている。

福田充(ふくだ みつる)
日本大学危機管理学部教授、同大学院新聞学研究科教授
昭和44年(1969)、兵庫県西宮市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。専門は危機管理学、リスク・コミュニケーション、テロ対策、インテリジェンスなど。内閣官房委員会委員、コロンビア大学戦争と平和研究所客員研究員などを歴任。著書に『メディアとテロリズム』(新潮新書)、『テロとインテリジェンス~覇権国家アメリカのジレンマ』(慶應義塾大学出版会)、『リスク・コミュニケーションとメディア』(北樹出版)、『大震災とメディア~東日本大震災の教訓』(北樹出版)など。平成29年(2017)には、テロ等準備罪の参議院参考人招致で国会にて政府側賛成陳述を担当。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介