「スモークジャンパー」を知っていますか?(出典:Fricker)

「スモークジャンパー」とは、1934年に米国ユタ州とソビエト連邦で組織された山林火災初動部隊だ。現在は全米で430名のスモークジャンパーが活躍している。

主な任務は、山林火災の初期消火隊としていち早く火点へ飛び、パラシュートで降下し、延焼拡大を阻止すること。もちろん同時に行方不明者の人命検索や負傷者の救急救助も行うため、パラメディックの資格と技術も持ち、山岳レスキューのトレーニングも受けているため、消防界のエリート集団と呼ばれている。


SmokeJumpers Sizzle Reel 2016 (出典:Youtube)

スモークジャンパーの携行装備は以下

・チェンソー(燃料、替え刃、シャープナー含む)
・消火手動ポンプバックパック※
・小型ポンプと25mmの20mホース(渓流や池から取水)
・防火帯を作るイグナイター(発火器具)
・折りたたみ式ショベル類
・やけどから身を守るファイアーブランケット
・2日分の水や食料、日焼け止め
・救急資機材(隊員用と要救助者用)
・ビーコン、無線器、GPS発信器、ナビゲーター
・ヘルメットカメラ
など

※■消火手動ポンプバックパック
https://www.vallfirest.com/en/extinguisher-backpacks


ほとんどの資機材は飛行機から現場基地となるランディングポイント周辺へ次々に投下される。スモークジャンパーの主な出動要請は小規模の山林火災発生時であるが、場合によっては大規模な洪水害や土砂災害による災害孤立集落への物資救援、雪崩救助などにも出動することがあるそうだ。

ヘリコプターによる隊員投入との大きな違いは、1回の投入隊員数だ。ヘリコプターの場合、投入隊員数は数名で装備も限られるが、スモークジャンパーに使われている小型飛行機は20名近くの投入隊員と初期消火用消防装備が積載できるため、何よりもいち早く延焼防止、人命救助、ピンポイントな現場情報収集を行えることである。

最も苦しい訓練は個人装備20kgの上に40kg近くの消火用具を担ぎ、上り下りの斜面や道なき道を進んだりする基礎体力訓練。そして、高度1200mと高度600mの両方から、それぞれの降下環境に応じたパラシュートの操作訓練で着地時のショック耐久訓練、及び、想定した火点までの物資搬送訓練だそうだ。

パラシュート降下中の事故対応に必要な空中救助訓練や乗っている飛行機が墜落する、または墜落したときの緊急避難訓練や救急救助訓練も行っている。

いかがでしたか?

米国には、山林火災対応特別隊のスモークジャンパー部隊を始め、渓流や河川救助部隊のストリームライダー部隊などもあり、とてもユニークですよね。

でも、ユニークだけれども、パラメディックが最低基準だったり、高度な知力と体力を有する人材の幅が広いというか、厚みも深いのが特徴だと思います。

日本でスモークジャンパーの必要性を山林火災対応以外に防災視点で考えると、孤立集落への物資救援や、土砂災害時の陸路遮断環境でのアプローチング手段として有効だと思われます。

航空自衛隊のパラシュート部隊が消火、救急、救助をトレーニングするか、または、消防がパラシュート降下訓練をするか?どちらが合理的かは微妙なところだが、出動機体の維持などを考えると自衛隊にスモークジャンパーを組織した方がいいのかもしれない。または、航空自衛隊に消防から出向してスモークジャンパー隊を作ることも可能かもしれません。

スモークジャンパーとして活躍したい方は、下記のウェブサイトに詳細が載っています。

■全米スモークジャンパー協会
http://smokejumpers.com/index.php

また、スモークジャンパーに必要なスキル、訓練、身体能力などは欠きに詳しく載っている。

■スモークジャンパーオペレーションガイド
https://gacc.nifc.gov/swcc/dc/nmsdc/documents/Dispatch/Reference/Interagency%20ISMOG_02_03_2017.pdf

下記には隊員投下時のパイロットの判断基準や投下方法、投下指示のタイミングなどが詳しく書かれている。

■スモークジャンパーパイロットオペレーションガイド
https://www.fs.fed.us/fire/aviation/av_library/ISPOG.pdf

スモークジャンパーの出動要請基準、活動手順や機体選定、出動隊員数と積載装備の基準などは下記に詳細が掲載されている。

■スモークジャンパーの活動基準
https://www.fs.fed.us/fire/people/smokejumpers/national-sj-users-guide.pdf

(了)


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
info@irescue.jp