大災害の重圧に耐える対策本部組織のあり方とは?
第3回:対策本部構成の見直しとアプリケーション支援
プリンシプルBCP研究所/ 所長

林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
2020/12/01
企業を変えるBCP
プリンシプルBCP研究所/ 所長
林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
首都直下地震や南海トラフ地震のような巨大地震を想定したBCPでは、通常、災害対策本部の行動計画を「初動フェーズ」と「BCP(復旧)フェーズ」に分け、それぞれで組織構成を変えて対応します。
各フェーズに対応したより実効性のあるグループ編成として、まず「初動フェーズ」の3日間(※)は内向き対応、つまり従業員の生命第一、負傷者の救援救護、安否確認、帰宅困難者対応、社内の施設被災の状況把握に主眼を置きます。4日目(※)以降の「BCPフェーズ」は外向き対応として、主要な顧客や取引先、市場動向、競合動向の情報収集のために、事業部や営業部が中心となってより事業継続に軸足をおいた行動をとります。
(※ここでいう初動3日間、4日目というのは仮想の設定です)
一般に災害対策本部のメンバー構成は「経営陣」と、実質的な作業を行う「実行メンバー(管理職を含む)」となります。
後者の実行メンバーは年に1度程度、事前に策定された行動計画をもとに対策本部(BCP)訓練を行います。これにより各グループの行動は熟達し、初動フェーズ、BCP(復旧)フェーズともに、行動内容は洗練されていくことになります。
しかし、この訓練で現実と乖離している部分が2点あります。
一つは、訓練に担当役員(対策本部長の社長を含む)以外の経営陣が参加しないこと。忙しい担当外の役員・取締役が数時間かかる訓練に参加することはほぼありません。
もう一つは、もちろん訓練という限られた時間内で検証できるはずもないことですが、対策本部の(経営陣以外の)実行メンバーの肉体的、精神的、頭脳的な体力、持久力が持つのかという問題です。
私たちのような危機管理コンサルタントがサポートするBCP訓練では、計画通り、時間通りに訓練を実施し、そのなかで気付いた点や反省した点を、危機管理マニュアルや次回の訓練にフィードバックします。それは非常に意味のあることですが、訓練は3時間もすれば終了し、実行メンバーはまた日常に戻ります。
訓練に参加したメンバーの多くは、現行の体制や枠組みで災害を乗り越えられるという自信を持ち、後日、危機管理委員会で報告を受けた役員・取締役の方々も実行メンバーの訓練に安心感を覚えるでしょう。
しかし、現実はどうでしょうか。
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