2017/12/12
講演録
「BCMの継続的取組み / 熊本地震での対応 / サプライヤーへのBCM構築支援の取組み」BCP策定推進フォーラム2017〜危機に強く、常に成長するための法則〜
弊社は精密加工装置と精密加工ツールの製造販売ならびに装置の研修・メンテナンスサービスなどを主な事業としています。お客様は国内外の半導体・電子部品メーカーで、世界シェア8割です。
弊社ではBCMの大方針として「お客さまが安心して取引できる会社」、「従業員が安心して働ける会社」になることを掲げ、精密加工ツールの生産から供給までを最優先としたBCPを計画しています。消耗品である精密加工ツールの供給が途絶すると、お客様の工場の操業への悪影響に繫がってしまうからです。
2003年からBCM活動開始。当初から経営層が参画
BCMの活動をスタートしたのは2003年です。他の会社の方から「ディスコはなぜそんなに長年、BCMに注力し続けられるのか」という質問をいただきますが、取り組みを継続できている一番の理由として考えられるのは、経営層のBCMへの参画です。
それを支える仕組みとして、経営層が参加して毎月開催するBCMコミッティがあります。BCMに関する会社の取り決め、審議事項、年度の目標などのテーマを扱い、活動状況の共有を行います。BCMは非日常を想定した取り組みであり、長い平常時には活動のレベルが低下しやすいという特性があります。毎月のコミッティは弊社の継続的な活動実現の基盤となっています。
また、活動機会の提供として、社内で40近い対象組織が平常時から活動を続けられるような場を提供しています。社内では「BCM毎月活動」と呼んでいますが、各組織で計画しているBCM対策の検証や、そこから生まれた気づきによる新たな対策の導入、非常時特有の役割や対応の習得といった機会になります。
2016年の熊本地震における弊社の対応ですが、九州支店が震源に近く、影響を大きく受けるような位置でした。幸いにも従業員30名の無事が地震直後に確認でき、社屋も建物構造自体への大きなダメージはありませんでした。しかし、熊本県内のお客様の工場施設で特に大きな被害があり、地震直後から復旧対応が早期に求められる状況でした。
当初、電気は早期に使えたのですが、電話がつながりにくく、水道とガスが途絶して復旧に時間がかかりました。また、交通状況が麻痺したことで物流が停止したため、お客様に製品を直接お届けすることもありました。現地の従業員の身の安全、生活環境の確保、生活再建、職場復帰への対応と並行して、お客様の状況把握と早期復旧対応が動き出しましたが、熊本空港が完全に止まったこともあり、人も物も自力での現地入りを繰り返しました。
サプライヤーに対して個別にBCP構築支援
また、現地の人は時間の経過の中で疲労とストレスが溜まっていきます。その目に見えづらい部分は遠く離れた東京の本社には伝わりにくいものです。現地での支援として、間に入って客観的な情報を伝えることは、対応が後手にならないことに繋がります。現地の負担をいかに軽減するかは重要でした。
弊社では、昨年からサプライヤーに対して、個別のBCM構築支援を始めています。これまで積み上げてきた自分たちのBCMの構築ノウハウや経験をベースにBCP策定プログラムの雛形を用意したもので、月に1回、サプライヤーの拠点に赴いて活動を実施するという形態を採っています。サプライヤーからお金をいただくことは一切ありません。
ただ、支援を開始した当初は想定通りに進んでいきませんでした。経営者の方の思いや考え、参加される従業員の方の前提となる知識やモチベーション、会社のカラーや文化は、各社で全く異なります。そこで、今では、完全に会社ごとにカスタマイズするやり方をとっています。サプライヤーの皆さんに、BCMの構築は必要なことだと感じていただけるような伝え方や支援を、今後も継続していきたいと考えています。
(了)
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/03
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方