土砂災害・研究最前線~国総研・土砂災害研究部を訪ねて、その1~
つくばで最新の技術に迫る

高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2018/01/15
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
茨城県つくば市に広がる筑波研究学園都市の中核的研究機関である国土交通省国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の土砂災害研究部を訪ねた。近年、深刻な被害をもたらしている土石流災害の実情と調査・研究の最前線を知るためである。
国交省資料によれば、2017年9月末現在で、全国の土砂災害警戒区域の指定状況は、(1)土砂災害警戒区域(警戒避難体制の整備、土砂災害防止法)及び土砂災害特別警戒区域(開発行為に対する規制、土砂災害防止法)の指定が完了した都道府県は、青森県、山梨県、福岡県、群馬県、栃木県、石川県、山形県、岐阜県、福井県、大阪府、山口県、長野県、茨城県の13府県(2)土砂災害警戒区域の指定が完了した都道府県は島根県、鳥取県、奈良県の3県、である。同年3月末時点での土砂災害警戒区域は全国で49万9298カ所、土砂災害特別警戒区域は34万2870カ所にのぼる。決して少ない数字ではない。
土砂災害研究部岡本敦研究部長の論文「国総研における土砂災害分野の研究・技術開発」(2017年6月「土木施工」発表)から日本の土砂災害の現状や国総研の取り組みを見てみる。
国連大学などによる「世界リスク報告書2016年版」は、世界171カ国の自然災害(地震、暴風雨、洪水、旱魃、海面上昇)の遭遇しやすさ(Exposure)を評価している。日本のExposureは世界4位、上位20には12位にオランダがあるだけで、その他G8または欧州諸国は含まれていない。日本が環太平洋火山帯に位置し豪雨だけでなく地震・火山活動の影響を受けることで、先進国としては異例に自然災害を受けやすい国土であることが改めてわかる。
独フェヒタ大学マルティン・クローゼ博士らによるミュンヘン再保険の自然災害データベースを用いた調査によると、1980~2013年の世界の土砂災害による年平均被害額は約200億ドル、うち日本は30億ドル超と世界の15%超を占める。内閣府による2015年日本の名目GDPは世界5.9%であるので、年度の違いはあるが世界平均をかなり上回っている。
以上から、我が国は世界的に見て、犠牲者数、被害額の面から土砂災害リスクが非常に高い国の一つであることが認識される。次に自然災害の発生件数等の推移を見ると、増加傾向にあることが分かる。気候変動、人口増加、経済発展に伴う危険な地域への居住地の拡大などが主要因と推察される。
国内の土砂災害による被害を軽減するため、また、世界中で自然災害リスクが増大する中、国際貢献を果たすためにも土砂災害に係る研究・技術開発の推進は喫緊の課題である。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2023/01/24
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月24日配信アーカイブ】
【1月24日配信で取り上げた話題】最強寒波への備え
2023/01/24
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月17日配信アーカイブ】
【1月17日配信で取り上げた話題】防災心理を学ぶゼミ生が制作した企業の防災マニュアル/コロナ発生から3年 企業の初動対応を振り返る
2023/01/24
BCPと助け合える関係が機能した災害復旧活動
2019年の台風19号でグループ含め3工場が壊滅的被害を受けたカイシン工業は、経営トップが「全力復旧」の方針を発表すると各工場が即座に活動を開始。取引先や協力会社の支援を受けて設備の交換を迷いなく進めるとともに、代替生産によって早期に出荷を再開しました。同社のBCPと助け合える関係づくりを紹介します。
2023/01/19
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月10日配信アーカイブ】
【1月10日配信で取り上げた話題】2023年のリスクを読む
2023/01/17
豪雪をもたらす寒波――1月の気象災害――
2005(平成17)年12月は極東域に強い寒気が南下し、日本列島は相次ぐ寒波に見舞われた。東日本と西日本では、12月の月平均気温が戦後最も低くなった。また、日本海側では記録的な大雪となった。その傾向は2006(平成18)年1月以降も続き、日本海側の山間部では大雪となる日がたびたび現れた。新潟県津南町で2月5日に最深積雪416センチメートルを記録するなど、多くの地点で積雪深の最大記録を更新した。このため、除雪や屋根の雪下ろし等の作業中の落雪や転落などの事故による死傷者が多数発生するなどの人的被害があったほか、家屋の損傷、交通障害、停電などの被害が多発した。気象庁は、2006年3月1日、前年12月からの一連の大雪を「平成18年豪雪」と命名すると発表した。今回は、この豪雪をもたらした寒波について解説する。
2023/01/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方