2018/01/23
防災・危機管理ニュース

文部科学省を中心とした政府の地震調査研究推進本部(以下・地震本部)は22日、政策委員会の「新総合政策基本施策レビューに関する小委員会」の第8回会合を開催。現行の地震調査研究の原則となっている「新総合基本施策」における実績や課題をまとめた報告書案を公表した。2月に報告書をとりまとめ、2019年度から適用される次期総合基本政策の策定に生かす方針。
現・総合基本施策である「新総合基本施策」は2009年に策定。2011年の東日本大震災を経て、2012年に改訂された。2012年の改訂では主に海域での津波観測に注力する旨が付加された。次期総合基本施策は2018年度に取りまとめ、2019~28年度まで適用する。このため現・総合基本施策で取り組むべきとされた各分野について、実績の精査や今後の課題発見を行っている。
レビュー報告書は現施策下での主な実績と今後の課題が主要内容。実績では太平洋の北海道沖から房総沖までの太平洋におけるS-netなど海域の地震津波観測網の整備、津波の即時予測の強化、活断層の調査研究での情報の体系的収集・整備や評価の高度化などが挙げられた。地域単位でM6.8以上の地震の発生可能性を評価する「地域評価」は2017年9月時点で九州、関東、中国の3地域で公表されている。
次期総合基本施策への検討に向けた今後の課題については、地震本部の総論的な課題として内閣府防災など政府で防災を担う他の省庁とのほか、地域防災計画を策定する地方自治体との連携を挙げた。また地震本部の役割について、次期計画においては短期的なM7クラスの規模の地震の被害を減らすか、将来的に見込まれるM9クラスの地震に重点を置くかなど整理が必要だとした。地震本部のハザード評価を耐震基準などへの活用することも呼びかけている。
内閣府が中心となっている政府の中央防災会議は2017年9月にまとめた報告書で、1978年に制定された大規模地震対策特別措置法(大震法)で前提となっている地震の直前予知は現時点で困難と結論づけ、そのうえで南海トラフ沿いでの最初の事象後にとるべき対応を盛り込んだ。地震本部もこの報告書を踏まえ、事象が起こった時の対応や情報発信も検討すべきとした。また地震本部は省庁や民間で防災情報を共有する防災科学技術研究所が中心となり整備しているプラットフォーム「SIP4D」への連携も積極的に行うよう今回の報告書案に盛り込んでいる。
観測については海域では高知県沖から日向灘にかけての観測網整備について、この問題を取り扱うワーキンググループが2017年に取りまとめた内容を反映し、進めるべきとした。津波のハザード評価は沿岸の高さだけでなく、津波の遡上地域まで含めることを最終目標とする。
地震本部では報告書案を基に委員の意見を踏まえ、2月に最終的な報告書のとりまとめを行う方針。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
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