2015/01/25
誌面情報 vol47
状況判断と情勢判断
「状況判断」をWikipediaで調べてみますと、以下のように書かれています。
状況判断は作戦行動を遂行するために必要な各種の分析に基づいて行われる状況を判断することである。状況とはその時点における物事の様子などであるが、こ の状況判断においては主に戦闘状況を指し、任務判断、地形判断、敵情判断から成る。複数の状況を併せて情勢と言う。作戦指揮官は与えられた任務を達成するために部隊が置かれた軍事的な状況を論理的な推論によって把握しなければならず、この思考法を定型化することは戦術教育を行う上でも意思決定を行う上でも 意義のあることである。…… |
もともと状況判断は軍隊用語ですので上記のような表現になっていますが、状況判断とはさまざまな分析によってその時の状況を判断することで、情勢判断はさまざまな状況から物事に対する意思決定をすることを言います。そして、自分の任務を遂行するために情勢判断を行い、行動方針を決定することになります(図3)。

この情勢判断は1回で終わりではなく、常にまわりの状況が変化するなか、最善の対応を取らなくてはいけない。つまり情勢の変化に応じて決定事項に修正を加えていかなくてはならないのです。
連続情勢判断と使命
こちらは某大学の研究室での講義資料がネットで公開されているものです(図4)。

この図4の例は、ある情報から行動方針を決定して実行し、実行の段階で新たな情報が入手できた場合には、その情勢に合わせて行動方針を修正して、実施事項を変えて物事に対処していくという流れを示したものだと思います。今の私たちに求められている、情報から判断する作業と異なるのは、「目的」がないことです。
私たちが頭を悩ませている緊急事態発生時の迅速な対処や事業継続などの業務で考えれば、“会社の●●を守るため”(継続するため)といったような目的が示されて、そのために何をしておかなければならないか、どのように判断しなければならないかといった流れになります。目的は何かという事を明確に理解しておかなければ、その目的を達成するための正しい判断や行動ができない可能性もあります。
情勢判断を一般的な問題解決の過程で考え、フローチャートにしてみると図5のようになります。

問題に直面したり問題が発生した時に、まずその問題を十分に認識して、目的を確認または決めます。次にその目的達成のために何をすべきかを考え、方策を練ります。
この方策が任務であり、確認したまたは決定した目的と併せて使命になります。使命は目的+任務で表現され、「●●●(目的を達成)のため、■■■(任務)を実施する」となります。この目的を確認して任務を決める作業を、「使命の分析」と言います。
次に現在入手できている情報を考慮して、任務を達成するためには、何をどうしたらよいのかを考えていくつかの案を出し、その案の中で最も効果的であると考えられる方策を最適な行動方針として決定します。その後は、最適の方策を実行するための計画を立て、行動し、そのなかで情勢が変化したり新たな情報が入手できた際には、必要に応じて計画を修正して行動します。最適の方策を決めるまでの「過程」が情勢判断にあたります。
誌面情報 vol47の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方