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ERMのリーダーはCFO 
日本IBMの体制や取り組みについてご紹介します。IBMコーポレーションとしてのガバナンスが2008年くらいから大きく変わってきて、弊社では2009年からERMが導入されました。そのためERMは考え方ではなく、体制を示しています。
ERMで特定した脅威に対してBCPを策定し、BCPの中に災害対策があります。災害に対応する組織を弊社の中ではCMT(クライシス・マネジメント・チーム)と呼んでいます。ERM、BCP、CMTにそれぞれ担当役員がいて、体制が構築されています(図5)。 

弊社に特徴的なものかもしれませんが、ERMを担当する部門はファイナンス、いわゆる財務・管理部門です。したがって、ERMのリーダーはCFO(財務担当最高責任者)になります。 

ERMのなかで、特に会社として取り組まなければいけない上位のリスクに関しては、それぞれ担当のオーナー(担当役員)が任命され、解決を図ります。そしてその対応状況に関してはヘッドクオーター(最高経営会議)に報告していく仕組みになっています。現在はその中のリスクの1つとして、BCPがあります。BCPを担当している役員は、COO(最高執行責任者)です。2013年5月まではBCPはCMTに組み込まれていました。その後BCPを独立させ、全社レベルでBCPに取り組むことになりました。BCPを策定していた部門は、それまで会社の中で半分くらいでしたが、現在では全部門で策定しています。 

歴史的に体制を見ると、CMTの担当部門にはいろいろな考え方があると思いますが、弊社の場合ではサービス部門の担当役員がCMTを担当することになっています。その後ERMがグローバル全体で立ち上がり、CMTからBCPが独立して作られました。この3つの体制が組み合わさって、現在の弊社のリスクマネジメントが構築されたということになります。

ERM体制の確立・連携のポイント 
弊社の体制はERM、BCP、CMTによって成り立っていますが、それとは別に危機管理の観点では3つの考え方が必要だと考えています。それは「Administration(管理)」「Planning(計画)」「Execution(実行/対応)です。」Administrationを担うのは事務局です。事務局が常に何をするべきか考えます。取り組むべきリスクは何か、何を考えなければいけないのか、どのように社員を教育して、どのような体制で備えるかの方針などもここが決めます。Planning体制もExecution体制も、Administrationで決定します。 

Planningは決定機関です。リスクを評価し、計画に対する検討と決定を行います。Planningの定義は、「計画を策定する」ことです。ERMは基本的に役員クラスが約10人が集まる体制となっていて、Planningが主要な役割だと考えてください。Administrationは事務局で、実務をよくわかっている社員が対応するので、役員はほとんどいません。

Planningはほぼ役員会レベルなので、視点が高く、会社レベルでリスクを見ることができます。AdministrationとPlanningが相互作用し、日々のリスクマネジメントが進められていきます。それらに対し、Executionは、何かあった時の体制です。 

現在の日本IBMは、ERM、BCP、CMTの3つの体制に、さらにこの3つの機能の視点が加えられますから、多少複雑になっています。難しいところになりますが、これらのことを日々考えながら、企業と言う限られたリソースの中で全体最適と個別最適、もしくは集中と分権のバランスを図っていくことが大事なのかと思います。 

日本IBMのBCPへの対応 
危機対応における日本IBMのポリシーは以下の3つです。
①お客様への影響の最小化
②最低限の企業機能維持
③社員の職場における安全確保、社員・家族の安否確認 
あえて優先順位をつけるとすれば、まず社員の安全確保、社員・家族の安否確認です。次にお客様の影響への最小化があります。日本IBMは社会機能維持事業者になっていませんが、お客様である銀行や公的機関は社会機能維持事業者に指定されています。そこで果たすべき責任には全力で取り組まなければいけません。そのための体制は図6のようになっています。また、事業領域での事業継続計画を考える視点は、「戦略とビジョン」「組織・人事施策」「プロセス」「アプリケーションとデータ、テクノロジー」「設備」と、このようなレイヤーで考えています。これは1つの参考として考えてください。 

IBMが考えるBCP検討プロセスは図7のようになります。脅威の想定から8つのステップで、評価(Assess)、計画(Plan)、実行(Execute)を行います。実際の対策として、何のために、どのようなことを計画するのか、そのための課題は何かなどをまとめたBCP文書を整備することを求めています。そして最低でも1年に1度、もしくは業務が変わった場合など必要に応じて見直してもらうようにしています。 

最後は、危機管理対策の考慮点です。基本的に、現状の経営資源に過大な変更をもたらさないことが前提です。そのためには現状の経営資源を活用した対策の立案や、継続すべき業務の最小化などを考えなければいけません。もう1つは、首都圏の復旧を想定に入れ、初動を明確化するという観点を持っています。また、被災した本部と代替本部の役割と権限に関しても明確化しています。

(資料提供:齋藤守弘氏)