東京都中小企業振興公社は1月28日、「コロナ危機を生き抜くBCPの運用方法」をテーマとするBCP策定推進フォーラムを都内で開催した。

第1部では、株式会社東京商工リサーチ情報本部情報部部長の松永伸也氏が基調講演を行ったほか、新建新聞社リスク対策.com編集長の中澤幸介氏が感染症を考慮したBCPについて解説した。第2部では、大成化工株式会社代表取締役社長の稲生豊人氏、株式会社マルワ代表取締役社長の鳥原久資氏、株式会社生出代表取締役社長の生出治氏の3者が事例発表を行なった。シリーズで、講演内容を紹介していく。第5回は、株式会社生出代表取締役社長の生出治氏の講演内容を取り上げる。

 

物流の安定を縁の下で支える多段階対応策

私たちは今、自然災害やパンデミック、また様々な経営リスクに直面しています。これらを乗り越えていくためには、経営体質の強化や強靭化の施策がとても重要になると思っています。

当社は、東京の西部にある瑞穂町を拠点に、軟質プラスチック製品の製造や包装材の設計、包装サービスなどを行っています。主要なお客様は、精密機器、医療機器、電気・自動車部品のメーカー様になります。BCP策定においては、「従業員の生命と安全の確保」、「事業の継続性の確保」に加えて、「企業体質の強化」を目標として設定しています。

BCPの具体的な取り組みとしては、同業者や仕入れ先との連携を特に重視してきました。代替生産体制を多段階で準備する3つの対策で、現在のパンデミックに対してもこの方法で対応策をとっています。

第一の対策は、予備在庫の確保です。通常は平均的な発注予測量に基づいて1週間分をストックするのですが、これを現在は20〜30%増量して、本社の周辺にある3カ所の倉庫に分散して積み増しを行っています。第二の対策は、協力会社による代替生産です。現在、30年以上取引の実績のある外注先に、総生産量の約2割の製造を委託しています。外注先は、加工機械など主要な生産設備はほぼ同じで、品質基準も当社と同等のレベルを維持しています。いざという時には、最大で総生産量の約5割程度はカバーできると見ています。第三の対策は、同業者に代替生産を委託する方法です。関東を中心とした同業8社と災害時における相互委託加工契約という協定書を結び、いざというときにお互いに助け合う仕組みを作っています。このグループでは、昨年成立した中小企業強靭化法に基づく専門家支援を受け、事業継続力強化計画に取り組んでいます。

また、非常時におけるサプライチェーンの強化では、1社あたりの発注量を増やし、より関係を深めていく方法をとっています。その代わり、一次仕入れ先、二次仕入れ先の会社にも委託先を作ってもらうという、いわば多段階で供給が止まらない仕組みです。