2018/03/15
防災・危機管理ニュース
日本大学は7日、同大学三軒茶屋キャンパスにおいて、平成29年度日本大学理事長特別研究シンポジウムとして「大学における危機対応とレジリエンス」研究報告会を開催した。冒頭あいさつの中で、研究者代表の同大危機管理学部教授の福田充氏は、「危機管理学部は法学・政治学・社会学的なアプローチで危機管理を研究するべく2016年にスタートした。その研究テーマの1つとして、大学などの教育機関のレジリエンスを高めるという役割がある。巨大災害が発生しても持続可能な教育機関のBCP(事業継続計画)の構築は、今後の大きな課題」とした。
同大専任講師の宮脇健氏は、「熊本地震・東日本大震災における大学の被害状況と危機管理対応」とした研究報告の中で大学の危機管理体制について発表。アンケートによる結果では、6割弱の大学が法令以外にも独自の防災計画を策定し、被災時の教員の参集ルールや対策本部の設置などを計画している一方、訓練内容も消火訓練や避難訓練にとどまり、図上訓練や避難所運営訓練などを実施しているのは10%弱だった。また、BCPの策定に関しては、「策定済み」が9.4%で、「策定中」は5.3%。半数近くの44.7%が「策定を検討中」とした。宮脇氏は「簡単な避難訓練はしている学校が多いものの、BCPの策定や専門性が必要な訓練をしている学校は少ない」と分析した。
続いて、同大専任講師の山下博之氏が「大学における危機管理体制と業務継続計画(BCP)」を報告。大学におけるBCPの特徴は「優先業務に季節性があること」とし、「2月には入試、3月には卒業認定や就職支援があるなど、季節によって優先業務が変化する。収入も特殊で、受験料や入学料、授業料など多くの収入が2月から4月に入ってくる」と指摘した。
パネルディスカッションでは福田氏のほか、文部科学省高等教育局大学振興課課長補佐の林剛史氏、東京都総務局総合防災部情報統括担当課長の中島敬子氏、同大本部総務部次長の道明康毅氏をパネリストに迎えた。司会は同大教授の河本志朗氏
道明氏は「東日本大震災が発生した時は理事長や学長など役職者が揃った会議中だったので、結果的にトップの意思決定がスムーズだった。その時に最も大事だったのは情報収集だった」と、当時の様子を振り返った。
中島氏は「発災してから72時間が、命が助かるラインと言われている。東京都では混乱を避けるために、発災から72時間はなるべく帰宅しないでその場にとどまるようにお願いしている。大学も極力協力していただきたい」と、帰宅困難者対策における大学の取り組みを促した。
林氏は「日本大学危機管理学部の特徴は、法学的なアプローチで危機管理のマネジメントができる人材を育てている点にある。行政でも、一度災害対応にあたると、次に災害が発生しても指名される場合が多い。現在、災害が発生したときに組織で中心となる人物が強く求められている」と、危機管理学部への期待を話した。
福田氏は最後に、「本研究は日本大学だけでなく、すべての大学にレジリエンスを創造することが目的。しかし、できているところは極めて少ない。日本の大学のレジリエンスモデルを構築していきたい。そのモデルは小・中・高校でも生かせるはず。ボトムアップでレジリエンスを高めることが必要」と、教育機関におけるレジリエンス構築の重要性を訴えた。
(了)
リスク対策.com 大越 聡
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