水俣豪雨の降り方

地上の雨量計に記録された水俣豪雨の降り方を、図4に示す。

画像を拡大 図4. 水俣豪雨に伴う降水量の経過(2003年7月19~20日)。左:水俣地域気象観測所(アメダス)、右:水俣市深川地区(県設置雨量計)。棒グラフは1時間降水量(左目盛)、折れ線グラフは積算降水量(右目盛)、単位mm

水俣で豪雨が始まったのは、20日の午前0時過ぎからである。気象庁の水俣地域気象観測所(通称:水俣アメダス、図4左)では、1時までに11ミリメートル降った後、2時までの1時間雨量は72ミリメートルの非常に激しい雨になった。滝のような雨が突如として襲ってきたことになる。これが集中豪雨の降り方というものである。その後も数時間にわたって強い雨が降り続いたが、朝7時には雨は止んだ。7時間の総雨量は224ミリメートルである。

熊本地方気象台は、19日22時25分、県全域に雷注意報を発表した。その後、20日0時50分には熊本・阿蘇・天草地方を大雨・雷・洪水注意報に切り替えたが、水俣市を含む芦北(あしきた)地方については雷注意報のみを継続させた。1時25分に発表された府県気象情報(図5)を見ると、気象台は熊本県に侵入し始めた線状降水帯に注目していることが分かる。しかし、既に水俣市付近で強まり始めていた別の降水域により、その30分後の1時55分には、芦北地方にいきなり大雨・洪水警報を発表することを余儀なくされた。もはや、大雨注意報を出せば事足りるようなレベルではなかった。集中豪雨の際の警報判断の難しさとはこういうものである。

画像を拡大 図5. 熊本地方気象台が発表した大雨に関する熊本県気象情報(2003年7月20日1時25分発表)

水俣地域気象観測所は水俣市の市街地にあるが、山間部では降り方が少し違っていた。図4(右)は熊本県が水俣市山間部の深川地区に設置した雨量計で記録された豪雨の経過である。深川地区で豪雨が始まったのは水俣アメダスと同じく20日午前0時過ぎであるが、雨が最も激しかったのは明け方の3~5時で、1時間降水量が90ミリメートル前後の猛烈な雨が2時間続けて記録されている。7時間の総雨量は323ミリメートルに達した。土石流で大きな被害のあった宝川内地区は、深川地区の東約2キロメートルのところにあり、深川地区と似たような雨の降り方であったと思われる(観測地点の位置関係については図6を参照)。深川地区においても、宝川内地区とほぼ同時刻に土石流が発生し、4人の命が奪われた。

画像を拡大 図6. 水俣付近の地図(国土地理院電子国土Webの地図に加筆)