従来と同じ手順でリスクを追加していくとBCPが肥大化する(写真:写真AC)

■現状の問題点

従来の地震対応BCPを策定した時と同じ手順を踏んで新たなリスクを追加していこうとすると、BCP全体(時間、労力、対策費用、ドキュメントの分量)が肥大化し、手に負えなくなる可能性があります。かといって、リスクの種類や特徴、リスク低減対策、緊急対応手順をまったく意識せずに全知全能のスリムなBCPを描くこともまた不可能です。

こうした肥大化の影響は、BCPの管理フェーズであるBCMにおいても顕在化します。例えばBCPがリスクごとに「地震用」「台風水害用」「パンデミック用」の3冊に分かれている場合、文書のアップデートや点検は煩雑で時間のかかる作業になってしまいます。また、無計画にリスクを追加したBCPは非体系的で整合性がとれず、引き継ぎの際にも後任担当者は書類の束を前に途方に暮れてしまうでしょう。

文書が未整理のまま混在も(写真:写真AC)

さらに、もう一つ気になる点を。実際の企業が策定したBCPを拝見すると、BCPの中核的な部分(「BCP本編」と呼ぶことにします)と緊急行動に関するマニュアル的な部分、会議に使用した参考資料などが未整理のまま混在していることも少なくありません。

中小企業向けBCPの基本形は「緊急対応プラン」と「BCP本編」です。「BCPに何を書き、何を省くか」を自問自答しながら見直しを進めなくてはなりません。今回はマルチハザードBCPの2つの文書構成のあり方について考えてみたいと思います。