2018/04/23
防災・危機管理ニュース

東京消防庁は21日、国内で初めて導入したVR(仮想現実)防災体験車(愛称:VR BOSAI)の運用開始セレモニーを渋谷区の東京消防庁消防技術安全所で開催。小池百合子知事も出席した。映像や揺れなどで災害を疑似体験でき、今後都民への啓発活動に使用される。
VR防災体験車は約1億3000万円をかけて造られた。ゴーグルを着用し、着席して災害の状況を体験する。全長12mで1度に8人が利用可能。地震編の場合、まず家の中の映像が目の前に現れる。緊急地震速報が鳴った後に震度7の地震が起こり、テーブルの下に隠れる。その間、上から物が落ちたり家具が倒れたりといった現象が目の前で起こる。ドアが開かず、さらに大きな揺れが起こり、家が壊れ救助されるまで閉じ込められるというシナリオ。
いすだけでなく足下も動き強い揺れのほか、臭いや水しぶき、熱も感じることができる。シナリオは地震編以外に火災編と風水害編も用意。VR防災体験車は今後、様々なイベントに出向き参加者向けに災害を体感してもらう、防災啓発活動に使用される。
この日、消防技術安全所の一般公開に合わせてセレモニーが行われた。出席した小池知事は木造住宅密集地域の不燃化や無電柱化、建物の耐震化といったハード面の取り組みと、啓発活動として3月に配布・配信が始まった「女性版東京防災」こと「東京くらし防災」や「東京都防災アプリ」にも触れ、「総合的な取り組みで減災を進める」と説明。VR防災体験車について「災害時の行動を考えるきっかけにしてほしい。『備えを常に』の精神で『セーフ シティ東京』を作る」と述べた。

小池知事はVR防災体験車に乗ったほか、消防技術安全所で火災時などの過酷な温度・湿度環境を再現できる「恒温恒湿室」も見学。2020年東京オリンピック・パラリンピックが行われる真夏の環境の再現や、熱中症の可能性がある人を判別するサーモグラフィ技術の説明を受けた。
全行程後、小池知事は取材に応じVR防災体験車について「一言で言うと怖かった。リアルな体験ができ、備えへ都民の意識が高まる」と述べた。さらに「このような体感が心構えにつながり、自宅の耐震性や周辺の道の広さ、電柱の有無といった状況を意識する」と説明。「防災は制度・技術・心構えの3つでより確実なものになる」とし、体感が生む心構えの重要性を語った。
東京消防庁ではVR防災体験車以外にも立川市の立川防災館でAR(拡張現実)を用いた、窓や階段からの転落といった生活空間における危険を説明するコーナーを3月に設置。また豊島区の池袋防災館では夜間の発災を体験できるナイトツアーを今月開始するなど、都民への体験・啓発活動に注力している。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方