VR防災体験車の前でテープカットを行う小池知事(中央)。左は都議会警察消防委員会の大津ひろ子委員長、右は村上研一・消防総監

東京消防庁は21日、国内で初めて導入したVR(仮想現実)防災体験車(愛称:VR BOSAI)の運用開始セレモニーを渋谷区の東京消防庁消防技術安全所で開催。小池百合子知事も出席した。映像や揺れなどで災害を疑似体験でき、今後都民への啓発活動に使用される。

VR防災体験車は約1億3000万円をかけて造られた。ゴーグルを着用し、着席して災害の状況を体験する。全長12mで1度に8人が利用可能。地震編の場合、まず家の中の映像が目の前に現れる。緊急地震速報が鳴った後に震度7の地震が起こり、テーブルの下に隠れる。その間、上から物が落ちたり家具が倒れたりといった現象が目の前で起こる。ドアが開かず、さらに大きな揺れが起こり、家が壊れ救助されるまで閉じ込められるというシナリオ。

いすだけでなく足下も動き強い揺れのほか、臭いや水しぶき、熱も感じることができる。シナリオは地震編以外に火災編と風水害編も用意。VR防災体験車は今後、様々なイベントに出向き参加者向けに災害を体感してもらう、防災啓発活動に使用される。

この日、消防技術安全所の一般公開に合わせてセレモニーが行われた。出席した小池知事は木造住宅密集地域の不燃化や無電柱化、建物の耐震化といったハード面の取り組みと、啓発活動として3月に配布・配信が始まった「女性版東京防災」こと「東京くらし防災」や「東京都防災アプリ」にも触れ、「総合的な取り組みで減災を進める」と説明。VR防災体験車について「災害時の行動を考えるきっかけにしてほしい。『備えを常に』の精神で『セーフ シティ東京』を作る」と述べた。

恒温恒湿室の説明を受ける小池知事(右)

小池知事はVR防災体験車に乗ったほか、消防技術安全所で火災時などの過酷な温度・湿度環境を再現できる「恒温恒湿室」も見学。2020年東京オリンピック・パラリンピックが行われる真夏の環境の再現や、熱中症の可能性がある人を判別するサーモグラフィ技術の説明を受けた。

全行程後、小池知事は取材に応じVR防災体験車について「一言で言うと怖かった。リアルな体験ができ、備えへ都民の意識が高まる」と述べた。さらに「このような体感が心構えにつながり、自宅の耐震性や周辺の道の広さ、電柱の有無といった状況を意識する」と説明。「防災は制度・技術・心構えの3つでより確実なものになる」とし、体感が生む心構えの重要性を語った。

東京消防庁ではVR防災体験車以外にも立川市の立川防災館でAR(拡張現実)を用いた、窓や階段からの転落といった生活空間における危険を説明するコーナーを3月に設置。また豊島区の池袋防災館では夜間の発災を体験できるナイトツアーを今月開始するなど、都民への体験・啓発活動に注力している。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介