多くの中小企業でなかなか進まないリスク低減対策(写真:写真AC)

■リスク対策が進まない真の原因

今回は「緊急対応プラン(ERP)」の記載要素の一つであり、おそらく多くの中小企業が“予算不足”を理由に敬遠しがちな「リスク低減対策」のアプローチについて考えてみたいと思います。

地震リスクには耐震対策、水害リスクには防水対策や重要機器の嵩上げ対策…などが必要なことは、どの企業も認識しています。しかし実際にこうした対策を実行・導入している中小企業は果たしてどれだけいるでしょうか。

先ほど「予算不足を理由に敬遠しがちな」と書きましたが、しかし、その根っこはもう少し深いようです。つまり「起こるかどうかも分からないものに予算は割けない」ということ。ハザードの種類が増えればその思いは一層強まるでしょう。

起きるかどうかわからないものに備えて特別に予算を投じるのはハードルが高い(写真:写真AC)

考えてみれば、労働安全衛生法は事業者に対して、労働者の危険または健康障害を防止するための措置を講じるよう義務付けています。もし従業員が大けがをすれば、安全配慮義務違反の罪を問われたりするわけですが、災害リスク対策を怠って従業員がけがをしても問題視されることはほとんどないでしょう。運が悪かったのだ、で終わってしまう。

リスク低減対策が進むか否かは、法的な縛りの有無が影響していることは明らかですが、不可抗力性の高い災害事象に法律を適用するのもナンセンスです。

そこで、ひとまず直球型のストレートな対策の話は後回しにして、ここでは業務慣習や環境を改善することで、それがそのままリスク低減策になるというアイデア、いわば「変化球型」の対策を考えてみましょう。人間の爪や髪の毛が指や頭を守る身体の防御機能として進化したのと同じように、日常の業務活動の中にリスク対策が融合している。そんなアイデアの話です。