2022/01/16
事例から学ぶ
徹底した訓練で組織への浸透測る

セブン-イレブン・ジャパンは2012年にBCPを策定以来、初めての大幅改訂を実施。大規模地震を想定したBCPから、「大規模災害に対する事業継続基本計画」をベースに、「大規模風水害」「首都直下型地震」「南海トラフ地震」「新型インフルエンザ等の感染症」とイベントごとさまざまな危機に対応できる形式に整備した。同時に、様々な教育、訓練と点検を取り入れ、人命を最優先にした事業継続の実現に向けて動き出している。
大手コンビニチェーンのセブン-イレブン・ジャパンは、フランチャイズビジネスにより全国約2万1000店舗を展開し、約40万人の従業員が店舗運営を支えている。1日あたり約2100万人が訪れるチェーン全店の売上高は約4兆8千億円(令和2年度)に上る。店舗の経営は、各オーナーに任されているが、約9000人のセブン-イレブン・ジャパンの社員が加盟店の経営を支援している。
前身となる株式会社ヨークセブンが1973年に設立されて以来、コンビニエンスストアのトップランナーとして24時間営業の開始、POS(販売時点情報管理)システムの導入、料金収納代行サービスの開始、セブン銀行の設立と店内ATMの設置など、まさに業界をイノベーティブに牽引してきた。商品開発力は高く評価され、数々のヒット商品を世に送り出している。社是に「信頼と誠実」の精神を掲げ、企業理念は「私たちは、いかなる時代にもお店と共にあまねく地域社会の利便性を追求し続け、毎日の豊かな暮らしを実現する」と謳う。
同社がリスクマネジメント室を発足させたのが2020年3月。これまでも防災やBCPには力を入れてきたが、社内のリスクを横断的にとらえるために、経営直轄での組織を新たに設けた。まさに、新型コロナウイルス感染症の対策が急務となっていた時期。リスクマネジメント室危機管理部の中澤剛総括マネジャーは「社会の変化にあわせてBCPを見直す必要があった」と語る。

中澤氏は2018年に陸上自衛隊西部方面混成団長を退官し、同社に入社した。まずは店舗で勤務し、実務を経験。続いてオーナーの意見を経営陣に届けるオーナー相談部として各地を回った。入社から約1年後に社長室付となり、リスクマネジメント室に配属となった。そしてBCPの改定作業にあたった。
「BCPの課題を洗い出すため、各部署をまわり、教えを乞うた。何よりも近くにプロパーで経緯に詳しい同僚がいてくれたのが心強く、彼のおかげもありBCPは完成した」と振り返る。
周到でわかりやすいBCPを策定するため、中澤氏は5つのステップをイメージしていた。1つ目のステップは、課題の分析。2つ目は、やるべきことの方向性を決め、BCPの原案を作成する。3つ目として、演習を実施してBCPを検証し、修正する。その上で、4つ目としてBCPを完成させ合意形成を図る。そして5つ目として取締役会での承認を得ることだ。以下は各ステップで実施したことをまとめる。
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