本ソフトウェアは、オーケストレーション(自動化)という言葉通り、これまで手間がかかっていたシステムの復旧作業を自動実行するというもの。具体的には、システム環境を登録し、切り替え手順をワークフローとして登録。関係するシステムどうしを結びつけることで業務グループごとのIT復旧を定義する。万一の被災時には、指示に従いワークフローを自動実行することで複数の手順を並行実行し、かつ人的なミスを削減など、正しい復旧が行えるようにユーザーをサポートする。

これにより、専門家への依存度が50%削減できるほか、定期的なDR(災害復旧)テスト時間を60%削減。リカバリの人的資源では75%も削減が可能になるとしている。システム切り替え本番はもちろん、平時においては、切り替えのリハーサルテストなどでも活用が可能だ。また、システム単体の復旧時間だけでなく、ビジネス全体の復旧見込み時間などが可視化できるという。

アンドレア氏は「自然災害なら、別の場所にデータセンターがあれば、簡単に復旧できるが、サイバー攻撃の場合は、データセンターが別にあってもシステムがつながっている以上、簡単に切り替えというわけにはいかない。さらに、自然災害は周辺全体が被災するのに対して、サイバー攻撃は1社だけが被災し、メールや送金、振込など、あらゆる活動ができなくなる可能性があり、風評の影響も大きい」とサイバー・レジリエンスの重要性を強調。

ダニエル氏は、ヨーロッパで始まった新たな個人情報保護法GDPRに触れ「サイバー攻撃も含め、対策を怠って、個人情報を流出させた場合、最大で年間売上高の4%の罰金が科せられる。サイバー・レジリエンスの取り組みは、CEOやCFO、CIOにとって避けることができない問題」と語った。
 

アンドレア・セイラス氏(左)とダニエル・ウィットヴィーン氏(右)


被災からの復旧を支援するアプリ開発に2000万円を贈呈


アンドレア氏はまた、自然災害への同社の社会貢献活動として「Call for Code」という取り組みを開始したことを明らかにした。

被災地のコミュニティをITで支援することが目的で、被災地救援などのアプリ開発ツールや環境の提供などに対して5年間で総額30億円の投資を行う。優勝者への賞金は約2000万円。被災地支援の医療、物資、人材の支援管理ソフトなどを想定しており、AIやクラウドサービスなどを活用したさまざまなソリューションのアイデアを募集したいという。

6月18日から8月31日までの約2カ月間募集し、受賞者は10月に発表される。(ニュースリリース(英文):http://newsroom.ibm.com/2018-05-24-IBM-Leads-Call-for-Code-to-Use-Cloud-Data-AI-Blockchain-for-Natural-Disaster-Relief

(了)