写真を拡大 水害リスク低減の考え方(提供:土屋氏)

浸水想定し防御ライン設定し対策

また、土屋氏はそもそも首都圏のハード面の水害対策の脆弱性も指摘。東京港の特殊提は厚さが30~40cmで大災害時での大被害の危険が高い。「スーパー堤防」と呼ばれる高規格堤防の有効性を土屋氏は説明するが、民主党政権時に事業仕分けで悪者扱いされ、2010年にいったん廃止。その後に従来計画の約873kmを、荒川、江戸川、多摩川、淀川、大和川のゼロメートル地帯を中心とした緊急性のある約120kmに縮小し整備を進めることとなったが、国土交通省によると2017年3月末点での整備状況は整備区間の約12%の約14kmにとどまっている。「政権が代わっても防災のための整備が変わらない仕組みづくりは重要」と指摘。国土の4分の1が海面以下のオランダのように基金を作り、政権交代に左右されない整備・財政措置をとることが望ましいとした。

止水板設置の際はすき間に注意(提供:土屋氏)

このように浸水の危険性が高い首都圏で、企業は事業継続のために何をすべきか。土屋氏は「ハザードマップなどを基に、まずオフィスのあるビルごとのBCP(事業継続計画)診断を行うことが大事」と話す。診断を基に、どの程度の浸水がありえるのかを把握。そのうえで設備や備蓄品など守るべきものの優先順位をつけ、最低限守るべきいわゆる「防御ライン」を設定。止水板の設置や設備の上層階への移動といった具体的対策を決める。当然安否確認や被災時の出勤・勤務体制や役割分担も重要となる。「日本にはまだ水害対策について詳しい人物は少ない。危険性の分析と、ハード面とソフト面両面からの対策を、専門家を呼んで行うべき」と土屋氏は語った。

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介