2022/05/22
事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く
「事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く」第3回は、重視するリスクについて。内閣府の「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、リスクを具体的に想定して経営を行っている、あるいは検討中と回答した企業に対して「重視しているリスク」について聞いている。結果は、全体では「地震」が93.5%で最も高く、次いで感染症(新型インフルエンザ、新型コロナ等)(81.2%)、「火災・爆発」(54.9%)が上位を占めた。大企業でも傾向は同じで「地震」(97.9%)、「感染症(新型インフルエンザ、新型コロナ等)」(87.9%)、「火災・爆発」(63.6%)となっている。注目したいのは、忽然と高くなった感染症である。今後の調査でどう推移するのか? 昨今事業中断の大きな要因となっているサイバー攻撃は? 電力のひっ迫警報で慄然とした停電リスクは? 企業が現在直面している調達リスクは? 過去の調査の傾向から、今後を予測してみる。
令和3年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」
今回の調査が実施されたのは、令和4年1月7日(金)~2月14日(月)。したがって、ロシアのウクライナ侵攻も、3月22日の需給ひっ迫警報も調査時点では予測できるものではない。その前提も踏まえて、企業が重視していると回答したリスクを見てみよう。
回答企業は、前出の質問で、リスクを具体的に想定して経営を行っている、あるいは検討中と回答した企業に限定されるが、サンプル数は1673で、全回答(1839)の9割となっている。実際、リスクを具体的に想定しているとの回答は全体で65.7%、大企業では83.2%、中堅企業では60.8%、その他企業では63.6%が「行っている」と回答しており、「現在検討中」を含めると、全体では88.4%、大企業では97.1%、中堅企業では89.0%と、大半がリスクを想定した経営をしている。
こうした企業が重視しているリスクの割合が、上記図に示されているわけだが、非常に多くのリスクを企業が懸念していることが分かる。これらが事業継続で対象とするリスクとどう関係するかは次回以降に解説したい。
グラフ上の大きな山は、地震、感染症(新型インフルエンザ、新型コロナ等)だ。地震大国である日本では地震を想定してBCPを策定する企業が多く、今回に限らず、過去の調査でも地震は他のリスクとは一線を画する。サイバー攻撃が入っていない点は不思議ではあるが「通信の途絶」に包含されているとしたら、意外に重視する割合が低いように感じる。感染症は、もちろん、いまだに感染拡大に歯止めがかからない新型コロナの影響を受けての結果と見て間違いない。が、問題は来年以降にこの水準がどう推移するかだ。
参考までに、現在公開されている平成25年度、27年度、29年度、令和元年度、そして今回の令和3年度時点の「事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果報告書をもとに、企業が想定・重視するリスクがどう推移してきたのかを次の図2にまとめてみた。感染症のリスクはいつから高まったのだろうか? サイバー攻撃や停電などのリスクはなぜ入っていないのか? そのほかのリスクは?
質問の聞き方や、回答の選択肢やその表記、さらには回答する企業も調査の都度変わっているため、一概に比較できない上で集計した点はご了承いただきたい。図2はあくまで傾向を把握するために独自にまとめたものである。
- keyword
- 内閣府
- BCP
- 事業継続
- 策定率
- 企業の事業継続及び防災の取組に 関する実態調査
事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解くの他の記事
- 新型コロナでBCPはどう変わる!
- 従業員へ取り組みを浸透させる!
- 対象とする災害を増やせばBCPは機能するのか?
- トレンドだけの「後追い」リスク想定になってないか?
- 被災時に役立ったのはBCPではなく安全確保や備蓄
おすすめ記事
-
-
燃料を止めるな! GSの防災・BCP災害時に機能する供給システムとオペレーション
石油製品の卸・販売、GS(ガソリンスタンド)運営を行う総合エナジー株式会社環境防災事業部開発・営業統括部長の服部洋氏に、災害発生時、電気や水と並んで重要なガソリンの供給を止めないための備えについてお話しいただきました。2022年6月21日開催。
2022/06/23
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2022/06/21
-
-
防災・BCPの実務ノウハウを他社にオープン化
重電機メーカーの明電舎は自社のBCPノウハウを他社にオープン化するとして、専門の事業会社レジリエンスラボを社内に設立しました。BCP/BCMの構築・運営を手助けするとともに、共同備蓄の枠組みもつくります。実際にPDCAをまわしてきた体験を生かし、現場実務に即した支援サービスを展開していく考えです。
2022/06/17
-
-
独自調査 富士山噴火時の企業の対応その2
リスク対策.comは、もし富士山が噴火したら企業がどのような行動をとるのかを探るため、 シミュレーション方式によるアンケート調査を実施。噴火警戒レベルが高まった時点、噴火発生時点、降灰が本格化した時点など、フェーズごとにシナリオを提示し、自社がとるであろう行動を選択肢から選んでもらいました。報告の第2弾として、シミュレーションを通じて明らかになった課題を解説します。
2022/06/14
-
元ニューヨーク市緊急事態管理局副長官が語る危機管理担当者の役割
危機管理担当者の役割とは何か。5月25日に開催した危機管理カンファレンスでは、元ニューヨーク市緊急事態管理局副長官で、現NYU Langone Health社エマージェンシーマネジメント・レジリエンス担当シニアディレクターのケリーマッキニー氏が講演した。2001年の同時多発テロ、そして世界最悪の感染状況とも言われたCovid-19への対応を通じて何を学んだことは何か。危機管理担当者はいかなる心構えで、危機発生時に何をすべきか。講演内容を紹介する。
2022/06/12
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方