2022/05/18
事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く
今号から、何回かに分け、内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果を解説するとともに、防災・BCPの課題を明らかにしていきたい。第1回は、BCPの見直し頻度と過去の災害における役立ち度合いについて。今回の調査結果では、過去の災害時にBCPが役に立ったかとの質問において、 BCPが「とても役に立った」と「少しは役に立ったと思う」を合わせても、約5割にとどまるとの結果が出た。まずは、その理由から探ってみたい。
今回の調査に使われた質問の原文を見ると、「近年の自然災害で被害を受けた際、BCPは役に立ったか」とある。サンプル数は全回答のうち、BCPを策定していていると回答した954社。回答は、1.とても役に立った、2.少しは役に立ったと思う、3.全く役に立たなかった、4.役に立ったか不明、5.その他、の5段階から当てはまるもの1つを選ぶリッカート方式がとられている。
結果は「1.とても役に立った」が14.4%、「2.少しは役に立ったと思う」が35.4%で、49.8%が役に立ったと感じている。この数字が高いと見るか、低いと見るかは意見が分かれるところだが、多大な時間を割いてBCPを構築していた結果、BCPが「少しは」という控えめな数字を入れても5割弱しか機能していないことは、BCPの策定率が高止まりしている以上に深刻な問題のように思える。
この理由を解く鍵は、この質問の結果が、他のどのような質問項目の結果と相関があるのか、を分析することである。
相関とは、密接な関係があることを意味する。統計分析上は、2つの質問結果のデータから、関係性の強さを表す指標(相関係数)を計算し数値化する。相関係数は1に近づくほど正の相関(正比例)の関係が強くなり、マイナス1 に近づくと負の相関(反比例)の関係が強くなる。すなわち、片方の数値が大きくなる(小さくなる)とき、もう片方の値も同様に大きくなる(小さくなる)ことを相関がある、とみる。
残念ながら、内閣府調査では、この分析結果が公表されていない、あるいは分析されていない。
- keyword
- 内閣府
- BCP
- 事業継続
- 策定率
- 企業の事業継続及び防災の取組に 関する実態調査
事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解くの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
-
-
能登半島地震における企業の対応レジリエンスの実現に向けて
能登半島地震で企業の防災・BCPの何が機能し、何が機能しなかったのか。突きつけられた課題は何か。復興に向けどのような視点が求められるのか。能登で起きたことを検証し、教訓を今後のレジリエンスに生かすため、リスク対策.comがこの2カ月の取材から企業の対応を整理しました。2024年3月11日開催。
2024/03/12
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月12日配信アーカイブ】
【3月12日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:東日本大震災 企業のハンズオン支援
2024/03/12
-
-
-
能登の復興は日本のこれからを問いかける
半島奥地、地すべり地、過疎高齢化などの条件が、能登半島地震の被害を拡大したとされています。しかし、そもそも日本の生活基盤は地域の地形と風土の上に築かれ、その基盤が過疎高齢化で揺らいでいるのは全国共通。金沢大学准教授で石川県防災会議震災対策部会委員を務める青木賢人氏に、被害に影響を与えた能登の特性と今後の復興について聞きました。
2024/03/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方