今号から、何回かに分け、内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果を解説するとともに、防災・BCPの課題を明らかにしていきたい。第1回は、BCPの見直し頻度と過去の災害における役立ち度合いについて。今回の調査結果では、過去の災害時にBCPが役に立ったかとの質問において、 BCPが「とても役に立った」と「少しは役に立ったと思う」を合わせても、約5割にとどまるとの結果が出た。まずは、その理由から探ってみたい。

今回の調査に使われた質問の原文を見ると、「近年の自然災害で被害を受けた際、BCPは役に立ったか」とある。サンプル数は全回答のうち、BCPを策定していていると回答した954社。回答は、1.とても役に立った、2.少しは役に立ったと思う、3.全く役に立たなかった、4.役に立ったか不明、5.その他、の5段階から当てはまるもの1つを選ぶリッカート方式がとられている。

結果は「1.とても役に立った」が14.4%、「2.少しは役に立ったと思う」が35.4%で、49.8%が役に立ったと感じている。この数字が高いと見るか、低いと見るかは意見が分かれるところだが、多大な時間を割いてBCPを構築していた結果、BCPが「少しは」という控えめな数字を入れても5割弱しか機能していないことは、BCPの策定率が高止まりしている以上に深刻な問題のように思える。

この理由を解く鍵は、この質問の結果が、他のどのような質問項目の結果と相関があるのか、を分析することである。

相関とは、密接な関係があることを意味する。統計分析上は、2つの質問結果のデータから、関係性の強さを表す指標(相関係数)を計算し数値化する。相関係数は1に近づくほど正の相関(正比例)の関係が強くなり、マイナス1 に近づくと負の相関(反比例)の関係が強くなる。すなわち、片方の数値が大きくなる(小さくなる)とき、もう片方の値も同様に大きくなる(小さくなる)ことを相関がある、とみる。

残念ながら、内閣府調査では、この分析結果が公表されていない、あるいは分析されていない。