2022/05/22
事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く
「事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く」第4回は、BCPで対象とする災害について。内閣府の「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、BCPを策定済みの企業に対して、BCPで対象とする災害の種類を聞いている(n=954)。この質問は、おそらく今回初めて取り入れられたものだが、結果は、全体では「2~3種類の災害を対象とする」が40.8%と最も高く、次いで「4種類以上の災害を対象にする」が30.6%と10%差で続く。一方、「災害を特定せず、災害から生じる結果(インフラの途絶等)への対応策を対象としている」(14.9%)との回答も「1種類の災害を対象とする」(12.3%)を上回った。対象とする災害を増やした方がいいのか、災害で生じる結果への対応策を考えた方がBCPは機能するのか?
令和3年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」
企業規模別では、全ての規模において「2~3種類の災害を対象としている」の割合が高くなっている。
BCPでは、特定の災害などを想定してBCPを策定するシナリオ型(あるいは原因事象型)と呼ばれる手法と、災害の結果として受けるリソース被害を想定してBCPを策定するリソース型(あるいは結果事象型)と呼ばれる手法があるとされ、どちらがいいのかという議論はBCPが本格的に日本に取り入れられ始めた頃からあった。リソース型について多少の補足をすると、交通機関が止まって人が集まれない、建物が使えない(入れない)、システムが使えない、といった文字通りリソースが受ける結果をベースに対策・対応策を考える。欧米では、テロなどのリスクも高く、対象とするリスクが多岐にわたるため、地震など、特定の災害を対象にしてBCPを作るより、リソース型の方があらゆる危機に対応しやすいとの論調が強いようだ。が、少なくとも事前対策や初動対応においては具体的な事象想定が必要だとする意見もあり、どちらがよいかは神学論争化しつつある。初動対応計画とBCPとを分けて策定する企業もある。

閑話休題すると、本調査では、「災害を特定していない」と回答した人以外に対して、具体的にBCPで対象とする災害についても聞いている(n=810)。結果は、企業規模別では、全ての規模において「地震」が9 割を超え、「感染症(新型インフルエンザ、新型コロナ等)」についても6 割を超えている。次いで洪水や火災・爆発が続く。

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