サプライチェーンの管理は、その重要さを増している。自動車のようにティア4(4階層)までに及ぶ複雑なサプライチェーンや、フードサービス産業での複雑で多種多様な調達先を必須とするものは極端な例であるとしても、ほとんど企業は原材料や部品を多くの仕入れ先から調達しており、一次取引先だけでなく、その先に至るまでのサプライチェーンを的確に管理することは経営効率だけでなく、社会的な責任においても不可欠な課題となっている。

調達でのリスクマネジメントは、調達プロセスにおける潜在的な問題を予見し、企業をリスクから守るとともに、より積極的には調達プロセスを改善することによって競争力の強化につなげること目的としている。こうした目的に沿って、5つの戦略を実行することが求められる 。

5つの戦略

①支出分析
まずは、調達の現状を正確に把握することが重要で、そのために支出分析を行うことである。調達先への支払いデータを分析することを通して、支払いの未確認、重複、不正など、支払上での不備を発見する機会を得る。また、全体的な支払いコストに基づいて特定のサプライヤーに対する再交渉の可能性を見出すこともできる。時系列的な分析に基づいて、全社的により効果的な調達に向けた改善も可能となりうるし、全社的にみて、特定の業者に依存しすぎているのかも判断できる。

②透明性の確保
2つ目の戦略は、調達の透明性を確保することである。これも調達の現状を的確に把握するためのもので、デジタル化の推進も含めて、リアルタイムで調達の動きを把握することが目的となる。デジタル化は一方で手作業による時間的なロスや入力ミスを削減することも意味する。しかも、すべての取引をデジタルに追跡可能とすることで、不正な動きをリアルタイムで監視することもできる。調達作業の効率化だけでなく、公正化に向けた改善にもつながるわけである。

③サプライヤーの整理
このような基盤を構築した後に、サプライヤーの整理に踏み出すことが、次の戦略である。過剰な調達先を持つことは、それだけリスクが高まることを意味する。調達需要の変動と安定的な調達業務の遂行を目標とし、事業継続性を踏まえた同時並行発注はもちろん検討すべきであるが、可能な限り少数の供給業を選別することで、輸送費用なども含めて、コスト削減も追求できる。