健康経営はかけ声だけでは実現に至らない
第10回:健康経営の要件(1)
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2022/09/14
ウイズコロナ時代の健康経営
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
健康経営に取り組む企業は増えています。しかしその一方で、「健康診断」や「ワークライフバランス」などのキーワードは思い浮かぶものの、具体的にどのようなことに取り組めばよいのか分からないという声も聞こえてきます。今回は、企業が健康経営を実現するにあたって、重要なポイントを確認しておきましょう。
健康経営は、次の通り定義されています。
企業が経営理念に基づき、従業員の健康保持・増進に取り組むことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上につながると期待されています。
優れた健康経営に取り組む法人を、顕彰制度を通して見える化することによって、それぞれの企業が社会的な評価を受けることができる仕組みがあります。
まず2014年度から上場企業を対象に「健康経営銘柄」の選定が始まり、2016年度からは「健康経営優良法人認定制度」を推進しており、大規模法人部門の上位層には「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位層には「ブライト500」のタイトルを付与しています。
この健康経営の顕彰制度の内容は、「健康経営の取り組み推進のため、具体的に何をすればよいか」という疑問への回答にもなっています。
「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」の認定要件は次の通りですが、重要な点を確認しておきましょう。
まず、健康経営という考え方が、企業の経営理念として明確に掲げられていることが重要です。自社が健康経営に取り組むことが明文化されていることが大切であり、それを統合報告書やCSR報告書に記載することで、社内外に発信することも求められます。
健康経営の取り組みは、人事部だけ、総務部だけのものではなく、組織全体で取り組むべきものですから、経営層のコミットメントが必須です。例えば、経営者自らが健康診断を定期的に受診していることも、具体的な指標と考えられます。
「わが社において健康経営を推進しよう」と決めただけでは、その実現に至りません。健康経営の取り組みを進める具体的な組織体制の構築が肝要です。社長や役員が健康づくり責任者になるなど、経営層が参加する組織体制が、健康経営の実効性を高めます。
また、従業員の健康に関する各種施策を検討するにあたっては、健康に関する専門知識が必要ですから、産業医や保健師などが健康経営推進の組織体制に加わることも求められます。 あわせて、健康保険組合と連携してさまざまな取り組みを進めることも検討するとよいでしょう。
ウイズコロナ時代の健康経営の他の記事
おすすめ記事
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方