2023/01/30
独自調査
リスク対策.comは、地域住民がどの程度防災に取り組んでいるのか、また防災の観点から行政に対してどのような要望を持っているのかなどを把握する目的でインターネットによるアンケート調査を実施した。その結果、2021年5月から避難勧告が廃止され避難指示に一本化されたことについては約5割しか理解していないことや、平時から国や地方自治体の防災のホームページなどがあまり活用されていない実態が明らかになった。調査は、2022年11月21日から22日にかけてインターネット上で行い、全国の20歳以上の成人男女1000人からの回答を得た。質問は、回答の質を高めるため「この質問は一番右の回答をお選びください」という条件項目を入れ、適切な回答をしなかったものを除き、計889人を有効回答として分析した。
(本調査は、兵庫県立大学教授の木村玲欧氏と関東学院大学准教授の大友章司氏の協力を得て実施しています)
※本記事は、危機管理白書2022に掲載したものです。
避難指示一本化の理解は約5割
行政の防災に関するホームページは見られていない
2021年5月20日付で災害対策基本法の一部を改正する法律が施行され、「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が「避難指示」に一本化された。アンケートでは、このことをどの程度理解しているかについて質問。「よく理解している」「ある程度理解している」「あまり理解していない」「聞いたことがない」の中から、当てはまる回答を選んでもらった。結果は、「よく理解している」が6.3%、「ある程度理解している」が44.2%で、理解しているとの回答は約 5割にとどまった【グラフ1】。内閣府が2019年10月の東日本台風後に行ったアンケート調査では、回答した約3000人のうち、当時の避難「勧告」と避難「指示」の、双方の意味を正しく理解していた人は17.7%と低く、このことが災対法改正の動きへとつながったが、今回の回答を見る限り、まだまだ国民に浸透している状況とは言い難い。
アンケートではまた、住民がどの程度、政府や自治体、民間企業の防災に関するホームページを見ているかも尋ねた。それぞれのホームページについて、「よく見ている」「見ている」「あまり見ていない」「全く見ていない」の4つの選択肢から最も当てはまるもの1つを選んでもらったところ、「よく見ている」「見ている」を足した割合が一番高かったのは、民間企業(Yahoo!、ウェザーニューズ、日本気象協会など)で49.2%、次いで自分の住んでいる市区町村(22.5%)、自分の住んでいる都道府県(16%)の順となった。気象庁では2021年、大雨による災害発生の危険度の高まりをインターネットの地図上で確認できる「危険度分布」のサイトを立ち上げ、愛称を「キキクル」に決定したが、キキクルを見ている人は、わずか10%だった【グラフ 2】。
避難勧告と避難指示が一本化されたことの理解と、こうした政府や自治体の防災ホームページの活用の相関についても分析を行ってみた。その結果、いずれのホームページも、「見ている」頻度が高いほど、避難指示に一本化されたことを理解している傾向が浮かび上がった。防災に関するホームページを見る頻度だけが、避難情報の理解と密接にかかわっているわけではないが、少なからず、両者には関連性が見られた【グラフ3】。
独自調査の他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方