日本のジュニアスポーツに実力主義の波(写真:写真AC)

部活動のクラブチーム化の弊害

スポーツの普及と強化にはジュニア育成などによる裾野の拡大が重要で、必要不可欠であることは以前述べた。至極当然だが、分母となる競技人口が増えれば、逸材が発掘される数も増加し、その結果トップクラスの競技レベルが強化され、ジュニア世代にとってあこがれの存在が生まれ、次の世代を担うという好循環を生み出す。

部活動とクラブチームが混在するジュニアスポーツ環境(写真:写真AC)

過去の日本のジュニアスポーツ環境は、基本的に学校の課外活動としての部活動が担うかたちで支えてきたが、指導者のレベル、課外活動ゆえのサポートの弱さなどの問題でクラブチーム化が進み、現在は部活動とクラブチームが混在する環境に置かれている。

この環境による帰結として、部活動は一部で学習の場というより職業訓練的で結果がすべての風潮が生まれ、強豪校が生まれた。クラブチームも同様に、強豪チームでないと活動が困難であるという影響が無視できなくなっている。

目標を同じくして協力し合う体験が重要だが(写真:写真AC)

本来、ジュニアスポーツは成長の過程において、目標を同じくして協力し合う組織活動の経験が社会性として将来の糧になることが重要であり、不可欠な活動目的でもある。もちろんそのなかで逸材となる存在が職業として活動する道は多くのジュニアに夢を与えるために必要不可欠だが、それはごく少数の逸材に限られる。普及して、指導者や競技振興などのビジネスへ拡大するのは当然だが、それでも全体からすれば一部である。

普通にマーケティング感覚で考えれば、視点を置くのは大多数に対してであるべきだが、実はこのごく少数の逸材に焦点を絞ることが過剰になり、その結果、強豪チームが生まれる。この構造は実は、大きな弊害を生んでいると考える。